【富士通】生徒たちの成長を促しながらその生徒たちに自分も背中を押された日々

クエストエデュケーション(※)・企業探究コース「コーポレートアクセス」は、中学生や高校生が教室にいながら企業のインターンシップを体験し、企業理念をもとにした課題(ミッション)に取り組むプログラムです。企業もその活動に伴走し、生徒のアイデアの深化と成長を見守ります。

(※)クエストエデュケーション……教育と探求社が提供するさまざまな探究学習プログラムの総称。各プログラム参加者が、1年間の活動の成果を社会に発信する全国大会もあります。

参画企業が中学生や高校生と共に考えたいミッションを創出。生徒たちは教室にいながら企業にインターンする形で、チームで自分たちなりのこたえを考え、企画にまとめプレゼンテーション。企業もその活動に伴走し、生徒のアイデアの深化と成長を見守ります。

そうした活動で企業の社員のみなさんが得るものとは。参加者の声をご紹介します。

CHECK1 参加者の横顔
笑顔を増やしたいから、次世代の感性も知りたい

ー会社ではどんなお仕事をされていますか?

Global FDEという、世界を見据えて価値創造するエンジニアの一人に社内で認定していただき、担当領域としては、AI技術を世界に普及する活動をしています。その一環で進めてきたのが、音声を認識して即座に翻訳・テキスト変換もするアプリの開発です。

社会人36年目。仕事でうれしいのは、自分がつくったものを使ってもらうなかで、その人が笑顔になったときや、「こんなことができるようになりましたよ」と新しい気づきがあったことを教えてくださったときです。それが一番のモチベーションになります。

ー参加した動機や、参加前の心境を教えてください。

会社でこのプログラムのことを知ったとき、まず思ったのは、「中学生や高校生という新しい感性をもつ世代がどういうことを考えているか、直にふれてみたい」ということでした。普段は学校現場となかなか接点がないですから。

また、ちょうど自分自身が仕事を楽しめていたので、今なら「社会人の楽しさ」を伝えられるかもしれない、という思いもありました。

定年が見えてきたなかで、富士通という組織にいるあいだにできる社会貢献をしたい、という思いもありましたね。

CHECK2 生徒とのふれあい
スイッチが入るようにするにはどうすればいいか

ー活動してみて印象的だったことを教えていただけますか。

生徒たちと共に考えたのは「『10代のわがまま』で社会を変革する富士通の新サービスを提案せよ!」というミッション。

活動を通しての一番の驚きは、「きっかけがあれば、子どもってこれほどの速さで成長するんだ」ということです。プログラムは中間発表、ブラッシュアップ、最終発表と進むわけですが、中間と最終では全然違います。スイッチが入ると、なんでも吸収しようとする素直さ、貪欲さが前面に出てくるのを感じました。

美術などの表現を大切にする学校のプレゼンに目を見張ったり、男子校ならのではノリのよさに元気をもらったりと、学校ごとの違いがあるのも面白かったです。

ー中高生と接するにあたり、意識したことはありますか?

生徒さんたちの考えた企画を「自分の畑に引き込む」ようなかかわり方はしないことです。こうすればもっと素晴らしいものになる、とひらめいたとしても、その「こう変えよう」という声は、生徒さんのほうから生まれなくちゃいけないと思うんですよ。生徒さんたちの主体性をいかに確保するか、そこが一番重要だと思っています。

それだけに、対話のなかで一人ひとりが「何をやりたいか」をキャッチし、そのやりたいことに沿って何ができるか一緒に考えることや、我々への気兼ねが見えたなら「遠慮はいらないよ、もっと広げちゃっていいよ」と後押しすることを大事にしました。

学校での活動の様子(生徒たちのグループワークで積極的に声をかける福岡さん)

CHECK3 自分が得たもの
真剣な姿に伴走するから、自分の心にも火がつく

ー活動のなかでご自身が得たものはありますか?

自分も変わろう、というモチベーションです。

「自分たちがやりたいこと」や「変えたほうがいいと思うこと」を真剣に考え、懸命に動いた先にはこういう風景が広がっているんだ、ということを、プログラムをやりきった生徒さんたちの笑顔を通して、私も疑似体験できました。

その点では、今の仕事が停滞気味で伸び悩んでいる人にもすすめてみたいプログラムです。私たちが生徒さんたちに提供できるもの以上に、彼ら彼女らの頑張りやその成長から、私たちが受け取るプレゼントのほうが大きいように思います。

ー活動を経て自分のなかで変化したことはありますか?

人を褒めることをこのスパンでここまでしたことは初めてで、それも、共にミッションを考えてくれた生徒さんたちに「ありがとう」の思いをもって褒めることができたんですね。

社内でも「ありがとう」の文化を醸成しようとしているのですが、今までは、恥ずかしさが先にきてしまうところがありました。ですが、この活動を経たことで、社内においても感謝を伝えることの閾値が各段に下がったのを感じています。

仲間に感謝し、すごいところは褒めて、指摘するところは指摘する。そうしたコミュニケーションは意識するだけでできるものではなく、練習が必要なんだ、ということを、十数校の生徒さんたちのかかわりから学ばせてもらいました。

福岡 寿和さん

富士通株式会社 Global Fujitsu Distinguished Engineer
大学卒業後、富士通SE子会社に入社。汎用機OS周りの開発を経験後、公官庁系SI開発や情報サービス系SI開発に従事。現在は、富士通株式会社にて、テクニカルコンサル、音声認識および翻訳を活用したパッケージアプリのマネージャー、Global FDE (AI)認定者として社内外での技術提言や情報発信なども担当している。

※肩書はインタビュー当時のものです。

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