学校の「壁」をなくし、先生の可能性を広げるコーディネーターの仕事

「教育に携わる仕事」と一口に言っても、その選択肢は非常に多様です。

教育と探求社では、学校コーディネーターとして、中学・高校の先生方と一緒に授業を作っていく仕事があります。彼らは一体どのような仕事をしているのでしょうか。また、どのようなバックグラウンドを持ち、どのような思いでこの仕事を選んだのでしょうか。

今回は、中部学校部でエリアマネージャーを務める佐原大河さんにお話を伺いました。

「教育をアップデートしたい」高校教員からの転職

ー「教育と探求社」に入社したきっかけを教えてください。

私は2020年まで京都府で高校の教員をしていたのですが、教員をしている中で、「教育をアップデートするには学校の外側からのアプローチが必要だ」と感じるようになったんです。

「教育をアップデートしよう」「新しい学びにチャレンジしたい」とがんばっている先生はたくさんいるけれど、とにかく教員は多忙です。学校の外の情報に触れたり、新しい学びを獲得する時間や機会が少なく、学校だけで教育を変えていくのは難しいと感じました。

もちろん一部の先生はいろんなところに顔を出したり機会を作ってチャレンジしたりしているけれど、全員がそうなれるわけではありません。「教育全体でアップデートされるためには、外からのアプローチも必要だ」と思い、学級担任を持った31歳の時、学校の外に飛び出ることを決意しました。

学校の中だけにがんばってもらうのではなく、学校の外からも関わっていくことで、教育の可能性を広げたい。外からのサポートや刺激によって、先生自身も新しい授業の考え方や価値観を学ぶことを、きっと楽しめると思うんです。そして先生の学びや楽しみが生徒にどんどん伝わる、というサイクルを回していきたいと思っています。

教育と探求社は「プログラムを導入しておしまい」ではなく、「先生と一緒に学びを作っていく」会社だと感じています。先生と対話し、学び合って、私自身も先生方とともに視野を広げていきたいです。

ー佐原さんにとって「教育をアップデートする」というのはどのようなことでしょうか?

実は私自身、学生時代ある先生によって価値観が変わった体験がありました。

私は大学で化学を専攻していたのですが、特に「無機化学」という分野で「こんなの覚えてためになるのかな?」と面白みを感じられずに過ごしていました。しかしある先生が、「なぜそうなるのか?」「どうしてこの化学反応が起こるのか」といったことを突き詰めて教えてくれて、学びに対する価値観ががらっと変わったんです。そこで初めて考える楽しさや「教科と日常のつながり」を知ることができました。

「なぜそうなるのか」を考える癖がつくと、自分の世界が広がる感覚があります。「そうした体験を、今度は自分が生徒たちに提供したい!」「暗記重視ではない、考えることが楽しくなる授業をしたい!」と思ったんです。

このことは私が教員になるきっかけでしたが、教員をやめた今もこの思いは同じです。覚えるだけではない、考えることの楽しさを知り、その考えを他者や知識と対話しながら更新していくことで、視野が広がり、つねに成長していける教育に、日本の教育をアップデートしていきたいと思っています。

学校コーディネーターの仕事とは

ー学校コーディネーターのお仕事は、簡単にいうとどのようなものですか?

「クエストエデュケーション」で先生の意識をどう広げていくかを考え、先生方と共にその価値を作っていくのがコーディネーターの仕事です。僕らもその地域の魅力を再発見しながら、地域の人たちや学校と一緒に新しい価値を作っていきたい。色々なアイディアや発想、その地域のリソースを使いながら学校の価値を最大化できるというのが、この仕事の魅力だと思っています。

ーコーディネーターの仕事内容について、具体的に教えてください

まず学校では年度初めにシラバスの策定をするのですが、学校の目標や生徒像を確認しながら、時には、遠足や修学旅行などの課外活動とどう探究学習と紐づけられるかを先生と一緒に考えます。学習指導要領の改訂により「探究型学習」が教科化され、状況が変わったからこそ先生たちにも新しいインプットが必要ですが、生徒だけでなく、先生方自身も向き合う「答えのない問い」に向き合う姿勢は一緒に探していけるよう、私たちはパートナーとしての役割を担っています。さらに、他校との橋渡し役となったり、企業の方と生徒が共に学ぶ場を作ることもあります。そして年度終わりに、先生たちと1年間の探究学習を振り返り、良かった点や次年度に繋げる改善点を話し合います。

また学校の状況や人数にもよりますが、コーディネーター1人につき5〜10校の学校を担当しています。

ーこれまでのステップを通し、どのように成長できたと感じますか?

1つは、教員からコーディネーターとなり、視野の転換ができたことです。入社して初年度にある学校を担当した時は、つい教員の目線で接してしまったのですが、そうすると先生は同僚と話してるのとあまり変わらないですよね。そうではなく、「外部から関わる人間だからこそできること」の追求に没頭できたというのはまず一つの転換点だったと思います。

第二の転換点は、中部のエリアマネージャーになった時です。自分の目の前の学校の価値を最大化するだけでなく、一緒に働くメンバーのモチベーションや彼らのやりたいことを理解する必要がありました。単に「じゃあこれやって」と仕事を投げるのではなく、向こうの立場も理解しつつ気持ちよく仕事できる環境を整えるという視点を持つようになったことが、次の段階の成長だったのかなと思います。

そうするうちに、自分が目指すものに少しづつ近づけているような気がします。

中部エリア・中部学校部の魅力

ー中部エリアや中部学校部の魅力を教えてください。

中部学校部の魅力は、全員がそれぞれ個性が強いことだと思っています。個性が強いからこそ、お互いが影響し合いながら変容していくことが前提になっているチームなので、自分が思ったことや感じたことを素直に口に出せるんです。みんながお互いに支持し合って、新しい価値が生まれやすい、最高のチームです!

違ったバックグラウンドを持つそれぞれが大切にしている考え方が合わさって、いつも想像以上のものが出来上がります。一緒に仕事をしていて本当に楽しく、メンバーに恵まれているなあと感謝する日々です。

ーお互いの個性がぶつかり合いながら作り上げた具体的なエピソードは何かありますか?

「探Qカイギ」というイベントをやった時のことです。

中部地区の先生たちが集まって、「自分が考える探求」というのを語り合うイベントだったのですが、メンバーの一人がデザイン思考など「非言語的なアプローチをやってみたい!」と言い始めたんです。それに対して否定的な意見から入るのではなく「とりあえず考えてみよう」となり、最終的にその社員の考えを中心に一つ一つ細かい部分の調整を踏まえて、さらに良いものを作り上げることができました。みんながお互いを信頼しているから実現できたことだと感じます。

ーそんな中部学校部はこれからどのような未来を描いているのでしょうか?

将来的には、中部学校部の先生たちとの大きなコミュニティができたらいいなと思っています。そのコミュニティに所属していることが楽しくなったり、嬉しくなったり、学びあうことに価値があるとみんなが思えるようにしたい。子どもたちに関わる全ての大人を巻き込んだ、大きなコミュニティを作りたいです。

ーどのような人にチームに参加してほしいですか?

教育現場の知識の有無に関わらず、まずは成長意欲の高い人を求めています。そして、チャレンジしたいという思いはもちろん、自分の考えに固執せずに自分自身が変容していくことを楽しめるかどうか、というのは一番求めている要素かなと思います。

また、一緒に働いている仲間は「対話による学び」というクエストの理念に共感してくれる人が多いように感じます。チームで学び合いながら、正解のない問いに向き合って自分の答えを探し求めることは、生徒がそれぞれ自分の世界を広げていくことに繋がると考えています。

目標や今後チャレンジしてみたいことは?

ー地域として学校を支え、より良くしていくという観点だと佐原さんが目指してる「地盤を作る」という方法になっていくのでしょうか?

そうですね。先生や大人のコミュニティを基盤として「日本の教育を変えたい」という僕自身の考えに紐づくもので、「先生自身にアプローチしたい」というのが根幹にあります。

そこで「価値を作る」というのはどういうことなのか、これからもっと考えていきたいなと思っています。

そしてまた、コーディネーターとして先生と一緒に学びを作ることを目指しています。

なにか課題があったとして、今明確な打ち手がなかったとしても、そこで終わりにしたくない。先生と一緒に「それなら特別なものを作りましょう」と協力して新しいアイデアを生み出すことが理想です。

教育のみらいについて考えていることは?

ー教育の未来やこれから進んでいく方向について何か考えていることはありますか?

そうですね…。

学校という「壁」がどんどんなくなっていくだろうなと思っています。「学び」は学校の中に存在しますが、それは誰かの価値観に縛られて提供されるのではなくて、学校の外からも入ってきます。外の人も学びを提供し、反対に外の人が学校から学び、生徒自身が学びたいものを自由に学べるような環境を作りたいです。

また、「こうすべき」という縛りにとらわれず、先生自身の中にある「壁」や、先生同士の壁がなくなっていくような未来がいいと思っています。学校の先生が「先生」の中で完結するのでなく、他の学校と繋がって何かができたら面白いのではないでしょうか。

メッセージ

ーありがとうございます。では最後にこのインタビューを読んでくれる方に対してメッセージをお願いします。

教育と探求社は自由度が非常に高いので、自分たちも新しい人と出会ってさらに学んでいきたい、変容していきたいという思いが強いです。ですので、一緒に学びあうような関係性でワクワクしながらやっていけたらなと思っています。人の話を聞いて一緒に考えるのが好きな方、自分も想像しなかったものを生み出したい好奇心のある方をお待ちしています!お会いできるのを楽しみにしています!