【すべての学校に、探究のとびらを届ける vol.4】 「場の空気を整える人」クラーク記念国際高等学校・熊本キャンパス卒業生/専修大学3年 坂口 太一さんの軌跡
2025年2月、探究学習の祭典「クエストカップ全国大会」の会場。
発表を前にした中高生たちの緊張や期待が入り混じる雰囲気の中で、ひときわ落ち着いた声で場を整えている大学生がいます。
クエストカップ11年連続出場を誇る強豪校、「クラーク記念国際高等学校 熊本キャンパス」の卒業生、坂口 太一さん。現在は専修大学3年生でクエストカップの学生スタッフとしてファシリテーターを務めています。
1700名以上が参加したクエストカップ2025では、企業ごとに別れて発表する1stステージのファシリテーターに加えて、全出場者が集まりグランプリを選出する最終ステージのMCにも抜擢されました。
大学生スタッフとして3年目のクエストカップを目前に控えた坂口さんは、当時学校にいけなかった中高時代のご自身の経験や想いを振り返りながら、今あらためてクエストカップに対する思いや出場する中高生へのメッセージを語ってくれました。
クエストカップの会場に立つたびに、少し前の自分を思い出します。
あのステージに向かって緊張している中高生の姿を見ると、「大丈夫だよ」って、声に出さなくても伝えたい気持ちになります。
でもそれは、偉そうに励ましたいわけじゃなくて、ただ「不安だった自分」に向けて、少し遅れて言葉を返している感覚に近いんです。

■家族の“待つという選択”に救われた中学時代
中学1年の冬ごろから、僕は学校に行けなくなりました。
行かなくなった理由は、これといった大きな出来事があったわけではなくて、「周りと合わないな」という感覚がずっと続いて、だんだん行けなくなった感じです。
3つの小学校から生徒が集まる、人数の多い中学校で、僕は小6のときに転校したばかりで、もともとあまり周りと仲がいいわけではない状態で、大人数の中に入っていったんです。
性格的に人が多い場所は得意じゃなかったし、中学に上がってすぐ部活と塾の両方を始めて、キャパオーバーしていたのかなと思います。
自分の中に余裕がなくて、周りと仲良くなるとか、関係をつくるとかがうまくできなかった。
なんとなく「ここは自分のいる場所じゃないな」という感覚がずっと続いていました。
学校に行かなくなった最初のころは、部屋から出るのも怖かったんです。
「この年齢の子が、なんで平日のこの時間に外を歩いてるんだろうって思われるんじゃないか」とか、そういう目線が怖くて、誰にも見られたくなかった。
だから、あの時の僕は「何もしないことを選んでいた」というより、「動けるほどのエネルギーがなかった」という方が近いんだと思います。
それでも立ち直ることができたのは、家族が「無理に行かなくていい」と言ってくれたからでした。
背中を押してくれたのではなく、押さなかったこと。
あの“待つ選択”が、僕を守ってくれたと今でも思います。
■「クエスト」と出会ったクラーク高校時代
高校進学でクラーク記念国際高等学校を選んだきっかけは、通っていたフリースクールで知り合った少し上の先輩たちが、みんなクラークに行っていたことと、参加したオープンスクールの雰囲気がとても良かったことでした。
はじめから友達がいるという安心感は大きかったです。
そしてクラークで出会ったのが、探究学習プログラム「クエストエデュケーション(以下、クエスト)」でした。(クエストの中でも、坂口さんが取り組んだのは企業探究コース「コーポレートアクセス」)
最初は驚きました。「高校生が企業の課題に取り組むって何?」って。
クラーク熊本キャンパスのクエストは、学年を越えた縦割りでグループを組んで活動します。
別の学年の人たちとチームを組んで、企業の人の前で発表するなんて、普通の高校生活ではなかなか経験できないですよね。
自分が少し大人になったような気がして、「この学校に来た意味があったな」と思えた要素でもありました。
先生が「生徒を信じて任せる」というスタンスでいてくれたことも、責任感や主体性の醸成につながっていたと思います。
■探究の中で見つけた、自分の役割
そして活動を続けるうちに、僕は自分の“役割”のようなものに気づいていきました。
真剣に取り組めば取り組むほど、意見のぶつかり合いは避けられません。
「こっちの案の方がいい」「あの人が全然動いてくれない」といった不満や葛藤の声が出ることもあります。
そういった中で、みんなの意見を整理したり、資料にまとめたり、話し合いの場を和やかにしたり、意見を出しやすい空気をつくったり。そういう役割を自然と担うことが多く、自分には向いていると分かりました。
それはクエストに取り組んだからこそ見つけられた、自分の強みだと思います。

■今、学校生活に悩んでいる中高生へ
もし今、不登校で悩んでいる人や、学校生活の中でしんどさを感じている人がいたら、「道はひとつじゃない」と伝えたいです。
普通の学校に戻ることだけが正解ではありません。通信制の高校もあるし、フリースクールもあるし、オンラインで学べる場もある。自分に合う場所を探していいし、選んでいいと思います。
僕自身、不登校の期間があって、部屋から出ることすら怖いと感じていた時期もありました。
でも、クラークに進んで、クエストに出会って、仲間といろんな経験をして、少しだけ自分を誇らしく思えるようになりました。
自分に合う場所や、自分が落ち着いていられる環境に、きっと出会えます。
■クエストカップへの想い
大学生になった今、僕はクエストカップの学生スタッフとして、中高生のみんなの挑戦を近くで見ています。
参加しているチームの発表を見ると、「あの時、自分もこんなことを考えていたな」とか、「ここまで来るのに、きっといろいろなことがあったんだろうな」とか、自然と気持ちが戻ってきて、ぐっとくるものがあります。
だから、ファシリテーターとして進行を担うけれど、それ以上に“伴走する人”でありたいです。
クエストカップに参加するたびに、「ちゃんと向き合った時間は、本当に力になるんだ」と感じています。
今年も、たくさんの想いを抱えてくる中高生と、彼らを温かく、熱く見守る社会の先輩たち、そして一緒に場をつくる仲間に出会えることを楽しみにしています。

■クラーク記念国際高等学校 熊本キャンパス
クラーク記念国際高等学校は、全国にキャンパスを持つ広域通信制高校です。通学型・オンライン型・全日型など、多様なスタイルから自分に合った学び方を選べるのが特徴です。
単に単位を取るだけでなく、探究学習や企業連携プログラム、部活動や学校生活の充実にも力を入れており、「通信制でありながら“学校に通う楽しさ”や“仲間との学び”も大切にできる」という点が大きな魅力です。

▼ 学校公式サイト:https://www.clark.ed.jp/campus/kumamoto-kumamoto/
【すべての学校に、探究のとびらを届ける】シリーズ第1弾、第2弾、第3弾も公開中です。
ぜひご覧ください。
第1弾 ワオ高等学校のインタビュー記事はこちら:https://eduq.jp/news/tuusinseries-wao/
第2弾 明蓬館SNECのインタビュー記事はこちら:https://eduq.jp/news/tuusinseries-meihokan/
第3弾 熊本県立菊池支援学校のインタビュー記事はこちら:https://eduq.jp/news/tuusinseries-kikuchisien/