龍谷中学校「マイクエスチョン」導入事例:生徒が「問い」を立てる楽しさを知り、探究的な学びが加速
佐賀市の龍谷中学校は、2025年4月から教育と探求社の探究学習プログラム「マイクエスチョン(MY QUESTION)」を導入しました。今回は、その導入の様子や、授業に参加した生徒・先生方のリアルな声をご紹介します。
▶ マイクエスチョンの詳細はこちら:https://eduq.jp/for-school/quest/myquestion/

1. 「社会貢献」だけが探究ではない。まずは”問い”へのハードルを下げる
探究活動の入口となる課題設定について、「社会で役立つテーマでないといけない」と思い込んでいませんか?
こう語ってくれたのは椛島先生(理科)。
これまでは「探究=社会に貢献できるような研究」という固定概念を持つ生徒が多かったそうです。しかし、今年は春先から問い探究コース「マイクエスチョン」を導入したことで、問いを立てることへのハードルが下がり、いいスタートを切ることができたと振り返ってくれました。

問い探究コース「マイクエスチョン」は、生徒が自ら問いを立て、もっと深掘りしてみたい探究テーマと出会うことができる、カードゲーム型の探究プログラムです。

2. カードゲームで問いが生まれ、生徒の視野が広がる瞬間
ゲームを通してたくさんの問いに出会い、これまでとは違った見方や考え方で世界を見つめてみる。そんなプログラムを体験した田辺ちさとさん(中学2年)に感想を聞いてみました。

「普段は考えないようなことや、他の生徒の多様なアイデアに触れることのできる楽しい時間でした」と答えてくれた田辺さん。中でも、「〇〇を色で表すと?」という問いがとても印象的だったそうです。
「ゴールデンウィークを色で表すと?」というお題に対して他の生徒が「金色」と答える中、田辺さんは「青色」と答えました。彼女にとって5月は「さわやかな青色」というイメージだったようで、そこから「ゴールデンウィーク=青色」と連想したのだとか。このゲームをきっかけに、物の捉え方や感じ方は人それぞれ違うことに気づき、「ユニバーサルデザイン」に興味を持つようになったそうです。
3. 日常の中での些細なことにも疑問を持ち、生徒の探究心を刺激する
宮﨑結暉さん(中学3年)は、「普段からいろんなことに疑問を持つことが増えた」そうです。「マイクエスチョン」では、自分で作った「問いカード」の〇〇に当てはまる「テーマ」を探し出すというフィールドワークがあります。
宮﨑さんは、普段何気なく目にする道路標識に意識が向き、「なぜこの標識は三角形なのか?青色や黄色の標識が多いのはなぜか?」そんな問いが自然と生まれました。また、テニスボールの跳ね方についても、「単なる反発力だけでなく、ボールの形やラケットの構造、打つ姿勢などが影響しているのでは?」という仮説を立ててみたこともあるそうです。
さらに夏休みには、個人探究として「ボーカロイドプロデューサーが作曲する際の思考プロセスを分析し、実際に自分でも作曲してみたい」と新たな意欲も示してくれました。


4. 抽象的な問いによって思考が柔軟に。生徒の変化に先生も驚き

授業を担当した德森先生(国語)によると、具体的なテーマよりも抽象的なテーマを取り上げた方が生徒たちは面白い答えを導き出していると感じたそうです。
プログラムが進むにつれ、生徒たちの思考が少しずつ柔軟になり、普段はあまり発言しないような生徒でも「自分の中にあるこだわり」や「自分を形作っている世界観」を言語化できるようになったことに、德森先生自身も驚きを隠せない様子でした。
5. 探究学習の可能性を広げる「マイクエスチョン」
前述の椛島先生(理科)は、「マイクエスチョン」が探究活動の初期ハードルを下げられる設計になっていることに感心し、「生徒たちだけでなく、われわれ教師側も”こんな問いでもいいんだ”と思えるようになった」と心境を語ってくれました。
また、今回「マイクエスチョン」の導入を決断した中村先生(英語)も、「これまでは探究テーマを学校側で設定していたが、生徒が自ら問いを立て、普段から疑問を持てるようになった」と手応えを感じており、探究型の英語授業においても、問いに対して意欲的に考えようとするマインドが育ってきていると思う、と心強いお言葉をいただきました。
「マイクエスチョン」は、「問いを立てることの大切さ」や「勉強は本来面白いもの」という気づきを生徒に届け、AIが普及する現代においても、物事を多角的に捉え、既成概念を疑う力を育むことに一役買ってくれるかもしれません。

■ 龍谷中学校について
龍谷中高一貫理数グローバル(龍谷中学校)では、21世紀の「本物の学力」と「豊かな心」の育成に力を入れています。
特に、挑戦する力、未来を描く力、論理的に考える力、他者を理解する力、コミュニケーション力、プレゼンテーション力という6つの資質・能力を育てることを目指しています。生徒たちは一人一台無償貸与されたiPadを日々生かしながら、重点的に取り組む英語教育をはじめ、自らの関心を深掘りしていく探究学習など、さまざまな教育活動に取り組んでいます。さらに、佐賀大学との連携教育、SDGs関連の活動、動物とふれあうフィールドワークなど、わくわくする学びが見える学校です。
▶ 龍谷中学校のホームページ:https://www.sagaryukoku.ed.jp/jhsc/