地域を越えて集った11チームがイノベーションプランを発信!クエストカップ2026 全国大会 地域探究部門「エンジン」開催レポート

2026年2月25日、立教大学池袋キャンパスにて開催された探究学習の祭典「クエストカップ2026 全国大会」において、地域探究プログラム「エンジン」に取り組んだ生徒たちの成果発表会が行われました。

「エンジン」は、中高生が地域に実在する企業のリソースや地域のリソースを探究し、それらを掛け合わせたイノベーションプランを創出する探究学習プログラムです。今年度は、鹿児島・さいたま・静岡・奈良・横須賀の5地域で取り組みました。それぞれの地域大会で選ばれた11の中学生・高校生チームがこの日集まり、1年間の探究の成果を発表しました。

本大会は、優劣を競う競争の場ではなく、地域ごとの挑戦や可能性が響き合い、互いに刺激を受けながら学び合う場として開催。次のアクションや新たな可能性を生み出す機会となりました。

  

地域を越えて集った11チームがイノベーションプランを発信!クエストカップ2026 全国大会 地域探究部門「エンジン」開催レポート
鹿児島・さいたま・静岡・奈良・横須賀の代表チームが集い、「優秀賞」を授与している様子
 (スクリーンに映っているのはオンラインで参加した鹿児島代表チーム)

      

大会の冒頭では、FC今治高等学校 里山校の学園長・岡田武史さんからビデオメッセージが寄せられました。

岡田さんは「大切なことは、夢を語ること。地道に粘り強く取り組むこと。信頼を勝ち得ること。皆さんも、頑張ってください」と生徒たちへエールを送りました。

地域に根ざした教育実践者でもある岡田さんの言葉は、約1年間を走り抜いてきた生徒たちの期待と熱量をさらに高め、大会の幕開けに花を添えました。

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当日のコメンテーターを務めたのは、株式会社Will Lab代表取締役・小安美和さんと、教育と探求社 開発部マネージャーの福島創太。また、各チームに伴走してきた地元企業の担当者を中心に約20名が「地域コメンテーター」として生徒の発表に熱いエールを送りました。

     

<出場校 チーム名/伴走企業> ※発表順

・静岡学園高等学校 リン/リョービ

・さいたま市立大宮国際中等教育学校 strawberry chips/シンミドウ

・鹿児島市立長田中学校 マル組/ブンカ巧芸社

・富士市立吉原第二中学校 アチャモキャップ/ジャトコ

・三浦学苑高等学校 スキアリ/ステップ

・奈良学園登美ヶ丘中学校 NARA CONNECT/つなぐる

・浜松市立可美中学校 5色だんご/中部電力パワーグリッド

・姶良市立加治木中学校 おーぞらー/南九州ファミリーマート

・奈良女子高等学校 STONE JUSTICE/国広産業

・清水町立南中学校 ちゅんた/イワサキ経営

・さいたま市立宮前中学校 Team Car/マレリ

地域を越えて集った11チームがイノベーションプランを発信!クエストカップ2026 全国大会 地域探究部門「エンジン」開催レポート

     

授業で扱う教材は同じでも、生徒たちの地域や企業への見方と発想は全く異なります。約1年間、企業の方と対話を重ね、試行錯誤を繰り返してきたその積み重ねが、それぞれ異なる11通りの企画として結実していました。

考えたアイデアを実際に製品化したプロトタイプや使い方のデモ画面を実際につくってきたチームも多く、企画の具体性が熱量と一体となって伝わってきました。その一部を紹介します。

     

「ブットバセーバー」(静岡学園高等学校 リン) 

東西に長い横長の地形である静岡県特有の移動課題に着目。伴走企業・リョービがもつ「射出成形の押し出す力」という技術的リソースを応用し、パイプ内をゲル状の乗り物に乗せて人や物資を超高速で移動させるという企画を提案しました。

「つなぐ」(奈良学園登美ヶ丘中学校 NARA CONNECT) 

奈良のスポーツ・部活チーム間が抱える「連携の難しさ」に着目し、IT企業・つなぐるの最適なシステムを構築できるアプリ制作技術を活用。個人ではなく「チーム」単位で練習試合の設定などの活用ができる情報共有アプリを提案しました。将来的に奈良県のスポーツを新たな地域資産に育てることを目指しました。

「マイタウンウォーキング」(姶良市立加治木中学校 おーぞらー) 

地域の観光資源などへの関心の低さや高齢者の健康課題を解決するために、ファミリーマートの商品とウォーキングプランを組み合わせたアプリを提案。購入した食品の消費カロリーに応じて、アプリがウォーキングコースやをスポットを提案します。運動時間の記録が可能で、ウォーキング時に撮影した写真からモザイクアートを作れる仕組みも特徴です。日常の買い物と運動を結びつけることで、美しい街並みが魅力の地域を歩く楽しさと健康維持を両立させるアイデアです。

どのプレゼンにも共通していたのは、「自分たちの地域をより良くしたい」という思い。企業とフラットに対話を重ねてきた生徒たちの言葉には、地域の課題を自分ごととして捉える当事者意識と、企画を実現させたいという熱意や希望にあふれていました。

各チームの発表後、コメンテーターと地域コメンテーター(地域企業の方)から、丁寧なフィードバックが届けられました。その内容は単なる評価ではなく、生徒の挑戦に秘められた可能性や学びのプロセスに光を当てるものでした。

生徒たちは「自分の挑戦が社会とつながっている」「自分たちが未来をつくれる」という実感を得ている様子が見てとれました。

また、来春から高校生になるという生徒は「課題だけじゃなくて、この町にはたくさんの魅力的なポイントがあることを知りました」と語りました。

声は静かでしたが、その言葉は会場にいた全員の胸に響きました。

地域を越えて集った11チームがイノベーションプランを発信!クエストカップ2026 全国大会 地域探究部門「エンジン」開催レポート

   

大会の最後に全11チームへ優秀賞が授与され、続いてリフレクションの時間が設けられました。

会場全体に向けて「いまの気持ちを話したい人はいますか」と呼びかけると、はじめは静かだった空気のなかで次第に手が挙がり始め、やがて途切れることなく続いていきました。生徒だけでなく、伴走してきた企業担当者や学校の先生も、1年間の挑戦を経て湧き上がってきた思いを言葉にし、その場にいる全員で共有しました。

「課題に目が向きがちですが、この県や町には多くの魅力やリソースがあると知りました。高校生になったら、地域の魅力も発信していきたいです」(生徒)

「私たちのアイデアを、企業の方は否定せず『面白い』と受け止めてくれて、ユニークな発想がどんどん広がっていきました。私も将来、周囲の人の発想を実現へとつなげられる大人になりたいです」(生徒)

「コロナ以降、子どもたちが大人と関わる機会が減る中で、企業の方と協働した時間は大きな学びであり、非常に貴重な経験だったと思います」(教員)

「生徒たちがプロトタイプづくりにまで取り組むなどアイデアをまとめていく姿には心を動かされた。私たちも企画を形にできるよう挑戦し続けたいと思います」(企業)

「6年間エンジンに関わり、『将来こんなものがあったらいいな』という思いに伴走してきました。エンジンが全国に広がり、若者の柔軟な発想が伸びていくことで日本はさらに発展していくと信じています」(企業)

エンジンというプロジェクトを通して学ぶのは、生徒たちだけではありません。伴走する企業や先生たちも、生徒の思いや挑戦に触れることで、地域や自分たちのあり方を問い直す機会になっています。

地域を越えて集った11チームがイノベーションプランを発信!クエストカップ2026 全国大会 地域探究部門「エンジン」開催レポート

      

「生まれながらの可能性」——これがエンジンのコンセプトです。

地域を越えて実践を共有したこの1日は、11チームそれぞれの可能性と、地域の未来の可能性をあらためて感じる場となりました。

生徒たちが見つけた地域の魅力や、自分たちの発想が社会とつながる手応えは、きっとそれぞれの地域に持ち帰られ、新しい問いや行動へとつながっていくはずです。

人口流出や若者の地元離れなどが深刻化するなか、地域の未来を担う子どもたちが、自分たちの暮らすまちを「自分ごと」として捉え、大人と共創する機会は、ますます重要になっています。

教育と探求社は、地域企業や学校など、地域の多様なステークホルダーと協働しながら、子どもたちが地域の可能性に出会い、自分自身で未来を描くことができる学びの場を全国に広げていきます。

地域に根ざした探究の実践を積み重ねながら、子どもも大人もともに学び合い、地域の未来をともにつくる。その挑戦を、これからも各地で継続・発展させていきます。

     

(執筆:寺崎佑亮/教育と探求社 地域探究プログラム「エンジン」担当)