2013年12月10日
おはようございます。
教育と探求社の宮地です。
「7世代先の子孫にとって、それは本当に
良きことか?」
アメリカの先住民は、部族の大切なことを決める
長老会議において、その場にいる全員が自らに
そう問いながら、話し合うのだといいます。
ぐるりとたき火を囲み、母なる大地と精霊たちに
感謝と祈りを捧げながら、100年以上も先の子孫に
思いを馳せ、答えを出すのです。
これは、教育事業を営む私たちにとっても、
とても重く、胸に突き刺さるお話しです。
100年先を見通すことは出来ないとしても、
せめて10年先の未来を見据えて、
そこで生きる子どもたちの幸福を思いながら、
私たちは考え、決め、行動をしているのか。
10年後、自らの判断や振る舞いの答えを見せて
もらう機会は、実際にはなかなかないのかも
しれません。それでも、そこにどれだけ
真摯に向き合い情熱を注いだか、
それで現実は変わってくるのだと思います。
アメリカ先住民の長老会議には、
もうひとつ心に響く設えがあります。
会議の冒頭、その場に参加する者たちは皆、
自分の口から「真実の言葉」だけが出てくるように、
神に祈ってから会議を始めるのだそうです。
日本にも「言霊」という言葉があります。
言葉には精霊が宿り、そこで語られたことは
具現化する力を持っているという考え方です。
飾り立てられた言葉や、大げさな言葉でなくとも、
心からの思いが「真実の言葉」となって表れるとき、
それは、重い現実を動かす力を持っています。
私たちは、過去に戻ることは出来ません。
この高度に発達した文明と科学を持って、
それでももう一度、「真実の言葉」を私たちの手に
取り戻すことが、私たちが今直面している課題の
処方箋になるのだと思います。
教育と探求社
宮地勘司
—-【目 次】 ————————————————–
1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト実践事例紹介
[法政大学中学高等学校(東京)]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)「クエストカップ2014」一般参観のご案内
「クエストカップ」とは、教育と探求社が提供する
教育プログラム「クエストエデュケーション」に取り組む
全国約一万人の中高生が日頃の探求の成果を
年に一度、社会に向けて発信する場です。
www.questcup.jp/2014/
今年も昨年度同様、法政大学市ヶ谷キャンパスで
全国大会を実施します。
一般の方のご参観は
すべて事前申し込みとなっておりますので、
下記サイトからお申し込みください。
www.wazoo.jp/open/questcup2014/
多くの方々のご参観、心よりお待ちしています。
(2)「クエストカップ2014全国大会」
を応援するイメージビジュアルの募集
クエストカップ2014のホームページや
パンフレット等で掲載する
イメージビジュアルを募集しています。
今年のテーマは「輝く花」です。
応募概要は以下の通り:
募集作品:自らが撮影、または制作した
「輝く花」をテーマにした写真、イラスト
(縦長方形は不可/サイズ自由)
応募方法:下記メールに作品データ1点を添付して、
職種とペンネームをメール本文に記載して下さい
pic2014@eduq.jp
応募締切:2013年12月13日(金)23:00まで
※なお、ご応募いただいた作品掲載についての通知は
ございませんので、HP・パンフレットをご確認ください。
みなさまからのたくさんのご応募、お待ちしています。
(3)東海エリアの導入校生徒による合同発表会
「東海カップ2014」を開催
来たる1月13日(月・祝)愛知の名城大学附属高等学校
にてクエストエデュケーション・企業探究プログラムの
導入校の生徒たちによる合同発表会「東海カップ2014」を開催します。
このイベントは生徒たちが一年間の探求の成果を
発表し、さまざまな学校が交流し合うことで、
参加するすべての子どもたちが成長することを願って
考えられた、有志教員の企画・運営によるイベントです。
日 時:平成26年1月13日(月・祝)12:30~16:00
会 場:名城大学附属高等学校 大ホール
www.meijo-h.ed.jp/info/access.html
対象校:愛知県・三重県の導入校
一般の方のご参観も可能ですので、下記電話番号へ
お問い合わせください。
教育と探求社 東海カップ事務局
TEL:03-6674-1234
(4)関東甲信越エリアのクエスト導入校先生有志による
イベント「Q-Fes’~五感×共有=∞~」を開催
来る1月18日(土)東京・両国の安田学園高等学校にて
クエストエデュケーション・企業探究プログラムの導入校
有志教員の企画、運営によるイベント
「Q-Fes’~五感×共有=∞~」を開催します。
このイベントはクエストに取り組む中高校生たちと教員、
そしてクエストに関わる企業の方々が
それぞれの枠を超えて“共に学び合い”、
“共に刺激し合い”、“成長し合う
”探求(Quest)のお祭り(Festival)です。
第一部は企業から与えられたミッションを
“五感”を使って捉えなおすワークショップ。
第二部では生徒たちがこれまで練り上げてきた企画を
企業の方々の前で発表。
最後の第三部では、そこまでのプロセスを通して
感じたことや自らの気付きを“共有”することで、
この場に参加するすべての人たちの可能性を
∞(無限大)に広げることを目的に
企画されたイベントです。
日 時:平成26年1月18日(土)14:20~18:00
会 場:安田学園高等学校 オーディオホール
www.yasuda.ed.jp/
対象校:埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・長野県
新潟県の導入校
本イベントは教育に関心をお持ちの一般の方のご参観、
ワークショップや交流会への参加を歓迎しております。
参加ご希望の方は下記電話番号へ
お問い合わせください。
教育と探求社 Q-Fes’事務局
TEL: 03-6674-1234
(5)都立高校での「クエスト」の授業の様子を、
教育と探求社NEWSサイトにアップしました
クエストエデュケーション企業探究プログラムに取り組み
現在、最終発表に向けて企画作りに奮闘する
東京都立清瀬高校の授業の様子をレポートしました。
たったひとりの先生が、200名以上の生徒たちを対象に
一斉にグループワークを行っています。
その画期的な手法を是非ご一読下さい。
eduq.jp/news/archives/4552
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2.クエスト実践事例紹介
[法政大学中学高等学校(東京)]
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このコーナーでは、
「クエストエデュケーションプログラム」
を導入している学校の授業での様子や、
ご担当の先生のインタビューを紹介します。
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先生インタビュー
【法政大学中学高等学校 杉浦 裕也 先生】
A.実際にミッションを与えられる前から、
ブレストに慣れていた方が効果的だと思うので、
その練習を4月から継続してやっています。
みんなで意見を出し合うことで、
思いもよらないアイディアが出る
という経験をたくさんさせたいんですよね。
そのことを通じて、斬新で独創的なアイディアを
出すことは一部のひらめきのある人だけが
できるのではなく、やり方さえ知っていれば
だれでもできることだと思ってもらいたいんです。
本物のミッションを受け取る6月の終わり頃までは
毎週1時間、必ずブレストの練習をする
時間を設けています。
1時間目はブレストの練習、2 時間目に通常の授業
というような感じです。
ブレストのお題は毎週変えます。
例えば「史上最高の卒業旅行を計画する」とか
「1,000円を1週間で価値あるものにするには」
というように、なるべくシンプルなものを
出すようにしています。
クエストのワークブックでは、思いついたことを
付箋に書き、貼り付ける形でブレストを進めることを
推奨していますが、私の授業ではホワイトボードを
チームの分だけ用意して、マッピングみたいな形で
書き込んでいきます。
こうすると、同じ課題を与えられているのに
「ほかのチームはこんなことを考えているのか!」
ということがわかって、刺激し合えて
高まるんじゃないかと思っています。
最初のうちは、ルールややり方を
学なければいけませんので、ごく簡単なお題で
メンバーを変えたりしながら1時間まるまる使って
ブレストをしますが、慣れてきたらブレストを10分、
そのあと7分で、出てきたさまざまなアイディアの中から
自分たちの案をひとつに絞り込む作業をして、
全チームが企画案を発表します。
当然、私からの厳しいダメ出しもセットですが(笑)
この取り組みによって、企業からのミッションを
受け取る頃には、すぐにミッションをどう解釈するかの
ブレストを始められるようになっています。
A.練習のおかげで、ブレストまでは
すごく楽しくやっているんですが、
いざ企画を成案化する段階になると
小さくまとまった企画になってしまうんです。
そこをどうやって“高3らしい、奇想天外な
アイディア”の企画に導くか。
私にとって、まだ越えられていない壁ですね。
前任者から引き継いで、私が担当するようになってから
今年で4年目なんですが、どうしても出てきた
“アイディア”と最終的な“企画”の間に
ギャップができてしまうような気がするんです。
例えば、現在の科学技術を無視してもいいから
奇抜な発想をというと、生徒たちはまず
「どこでもドア」的な発想から始めます。
もちろん、それでよいと思っていますが、問題は
「どこでもドア」そのものは実現できない
かもしれないけれど、それに近い状況にするのは
できるかもしれないぞ、という頭の切り替えが
できるかどうかなんです。
せっかく考えたアイディアなのに、彼らの頭の中で
企画に繋げられないと思ったら、スーッと引いていく。
そこが見ていてもどかしいんです。
私がそれをことばで説明するのは簡単なんです。
でも教師はファシリテーターだっていうじゃないですか
どうやったら彼らを上手く導いてあげられるのか、
そこは今もって試行錯誤を重ねていますね。
A.私の授業は、一応「ビジネス」という科目なので、
自分たちの立ち位置が一体どこにあるのか、
そこをつねに意識させるように心がけています。
つまり、「お前たちの企画は、誰のためのものなのか?」
「誰の笑顔が取れるのか?」というところですね。
生徒たちが必ず陥るパターンなんですが、
つい生産者目線の企画を作ってくるんです。
「私たちはこういうのを作りたい!」
という、生産者の都合だけが前面に出た
消費者目線になっていない企画。
もともとは企業の目線で考えられたミッションだから
当たり前なのかもしれませんが(笑)
それから「こうしたらミッションを上手く解釈できたから
オッケー!」みたいな、課題をクリアするのが
目的になってしまっている企画とかね。
そういう企画は容赦なく「誰が喜んでいるんだよ!」
と突っ込むわけです。
企業って、当然利益をあげなきゃいけないものですが、
それは企業の最終目的ではないですよね。
人間が呼吸することを目的に生きてはいないのと一緒で
企業も利益をあげることではなく、
社会に対するミッションをクリアすること
それこそが目的だったり、
存在意義だったりするのではないかと。
本末転倒な企画というのは、大体呼吸する方が
目的になってますね。
そんな時は、1学期の新人研修でやったときのことを
思い出させています。
自分たちがインターンしている企業の理念、社訓に
戻らせる。
あとはとことんダメ出しすること。
中学生や高校の低学年、
あとは全員に取り組ませているような状況だったら、
励ましたり、やる気を出させたりということの方が
必要なんでしょうけれど、私の授業は一応選択なので
自分でやりたいという気持ちで集まっているわけです。
ですから、励まし、後押しというよりは、生徒たちにとって
適切な壁を作ってあげなきゃいけないと思っています。
あと1割頑張ると、乗り越えられるような壁。
高過ぎてもダメだし、低過ぎてもダメなんです。
また一方では、わかりやすい、論理的な指摘ではなく、
時には、理不尽で、意味わからない指摘も
大事だと思っています。
教師としての壁、大人としての壁、企業としての壁・・・
あの手この手を使って、生徒たちにとっての壁となり、
君たちの考えのどこがダメで、どこに漏れがあるのか
そういうダメ出しを適切に行うように心がけています。
そうすると、生徒たちは自分たちの頭をフル回転させ、
自分たちのチームが何をどう改善すべきかを
考えるようになります。
こうした過程が結束力や問題解決力を
高めていくことにもつながっていると思っています。
A.間違いなく言えることは、
クエストに取り組んだことによって
生徒たちが社会との関わりを持つ敷居が低くなっている
ということですね。その大きな要因となっているのが、
クエストに関わる大人たちの“生のことば”なんです。
このプログラムにある
「はい、みなさん!お元気ですかぁ?」
という動画もみんな楽しみにしていますし、
何より、企業の方々が学校に訪問して下さって
直接声を掛けてくれることが学びの動機を
高めてくれているんです。
昨年の全国大会の最後の方で、企業の方々や
他校の生徒たちと交流する企画がありましたよね。
全国大会に出場したチームの生徒たちから聞くと、
あれがものすごくよかったらしいんです。
「あの場で聞いた話がものすごく有意義だった」って。
昨年全国大会に出場した先輩たちが、
今の生徒たちに体験談を話すということをやった時
全国大会に出場できたチームと
そうでないチームとでは全然違う経験ができる、
だからお前たちも全国大会に行けるように頑張れ!
ということを語ってくれたんです。
それを聞いた生徒たちが
「私たちも絶対に全国大会に出て、同じ体験したい!」
と考えるようになりました。
企業の方々のことばや、そこでの体験が
彼らのその後に、よい連鎖を与えてくれているのは
間違いないです。
クエストを経験した大学生のOBたちが
全国大会のスタッフとして毎年ボランティアで
参加させていただいているようですし、
クエストみたいな体験をもっとやってみたいということで
社会とつながるような企画に参加しているOBが
結構いるんです。
例えば、“Sカレ(Student Innovation College
の略)”という全国28大学32ゼミが参加する
ビジネスコンテストに参加したり、自分たちで
大学生を対象とした授業を企画して、講師の交渉、
広報、授業の運営から何から全部やったりとか。
自分がやりたいこと、やるべきことを自分で探せる
ようになった生徒が増えたんじゃないかなと思います。
A.斬新で独創的なアイディアは自分で創り出せる、
ということですね。
アイディアが出るか出ないかの違いなんて、
出し方というものを知っているか知らないか
だけだと思うんです。
自分ひとりじゃなくて、チームとして
取り組むことによって、自分ひとりだけでは
思いもつかなかった発想が生み出されていく。
卒業生が言ってたことなんですが、大学のゼミなんかで
ほかの学生はできそうもないと思っているのに、
自分だけが必ずできると思って発想していることが
よくあるらしいんですよ。
大学に進学しても、社会に出たとしても、
周りをうまく巻き込みながら新しい発想を生み出し、
それを実現できるんだという信念が
彼らにも持てるようになってほしいな、と思います。
それと、“一人ブレスト”できるようになるといいですね。
「自分」って、探すものじゃなく、創り出すものだと
思うんですよ。
だから、自分で考えたキーワードやテーマを出発点に、
自分自身で自分の考えを否定せず、
奇抜であるほどよく、とにかく量を多く
アイディアを積み重ねていくことによって、
はじめに自分が考えている自分よりも
遥かに斬新で独創的な自分というものを
創り出せるのではないでしょうか。
それこそが、生きる力かな、なんて思います。
僕自身も一人ブレストを日頃からやっていて、
色々なことを日々創造しているので、
彼らにも一人ブレストを身につけてもらって、
自分を創り出すことを実践していってほしいですね。
◆過去の記事はこちらから
eduq.jp/interview/?p=690
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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む
現場の教師が、生徒と共に日々奮闘する姿を
エッセイ風に書き綴っていきます。
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12月2日「30センチの壁」
授業は、先日行った校内発表会での様子を
見るところから始めた。
「自分たちの企画を見てどうだった?
一年生と比べてどんな風に感じたかな」
「やばかった~!一年生の方が全然良い企画だったし」
「私たち、完全に負けてたよね」
「去年の私たちよりもクオリティが高かった。
これって、一年生の方が優秀ってことじゃない!?」
ふざけながら感想を言い合う彼女たちの心中は
決して穏やかなものではないはずだ。
「全国大会出場でしょ」
迷わず、そう宣言する生徒。
その言葉に圧倒されて驚いた表情を見せる生徒。
「えー、そんなの無理でしょ」と弱気になる生徒。
「弱気になってどうすんの、やるしかないっしょ!」
と、けしかける生徒。
彼女たちの思いはさまざまだが、
このままでは終わらせたくない
という共通の思いがあることがわかった。
A4用紙に大きく“目標 全国大会出場!”と書き、
ホワイトボードに貼り付けた。
「だとしたら、今みんなが乗り越えるべき壁は
校内で一番良い企画を作って、まずは予選を通過する。
その壁を乗り越えるために、もう一回企画を練り直そう」
彼女たちは大きく頷いた。
こうして迎えた今日の授業。
私にとって、ひとつ大きな目的があった。
それは彼女たちの前にある“壁を取っ払う”ことだった。
彼女たちの前には、いつも大きな壁が
たちはだかっていた。
それはノートパソコンの画面だ。
彼女たちの話し合いは、いつもノートパソコンの
画面を隔てて行われていた。
ネットで探してきた情報を共有することは容易なのに、
自分のアイディアをみんなの前で話すことには
抵抗がある。
たった20センチの高さしかないパソコンディスプレイが
いつも彼女たちの話し合いに壁を作り、
腹の底から議論を交わすことを
妨げているように見えた。
「今日はパソコンを全員しまってください。
みんなの頭の中にあるものだけで、今日は勝負しよう」
抵抗するかな?と予想していたが、思いのほか素直に
全員がパソコンを片付け始めた。
さてどうしようか。
彼女たちの強みと弱みを頭の中で整理する。
弱みは「アイディアを整理して全体を俯瞰すること」、
「アイディアを互いにぶつけ合うのを避けること」だが、
その一方で、「感性の鋭さ」という
素晴らしい強みを持っていた。
彼女たちの強みを最大限引き出す方法は何か。
何度も考えて行き着いた方法が、彼女たちの代わりに
私が彼女たちの何気ない発言を
メモで残しておくことだった。
「みんながこれまで考えてくれたことを
メモしたものがあるので、それを整理しながら、
足りない部分をみんなで話し合っていこう」
まずは企画の全体像を俯瞰するところから始めた。
ターゲットは誰なのか。
そのターゲットにどうなってほしいのか。
そのためにどんな商品を提案すればよいのか。
書き留めてきたメモをA4用紙に大きく書き直して、
一つひとつ貼りながら、彼女たちの頭の中を整理した。
こうして全体を眺めてみると、企画のボロが
段々と見えてくる。
ここから今度は批判家になりきって、
企画の矛盾を指摘していく。
「なんのために、○○はあるの?」
「これって、このターゲットの人たちの
本当に求めていることなの?」
厳しい指摘に、誰がこれに答えるのか見合わせて、
ようやく一人が代表して答える
というやり取りをしばらく繰り返した。
それ以外のメンバーが傍観者のように振る舞うのが
気になった。
「自分が答えなくても、きっと誰かが答えてくれるだろう」
そんな気持ちが見て取れた。
素晴らしいアイディアを自分には出せるわけがない――
その思い込みが自分のアイディアを
他者に見せることを阻み、傍観者として振る舞う原因を
作っているのではないだろうか。
パソコンの壁は外れたが、彼女たちの心の壁は
一向に崩れないことにヤキモキしはじめていた。
「あ~、めんどくさい!!」
思わぬところで壁を崩すきっかけが生まれた。
「ここは、こういう意味で考えていたんじゃない?」
「いや、そうじゃなくてこうでしょ!」
企画の解釈の些細な違いについて
やり取りが交わされ、その中で思わず出た言葉が
“めんどくさい”だった。
「めんどくさいじゃなくて、
まずは○○ちゃんの話を聞こうよ」
咄嗟に出たひとことが、彼女たち全員の意識を
“傍観者”から“当事者”へ変えた。
先生から発せられる問いに仕方なく答えるのではなく、
自分たち同士で互いに向き合って話し合おうと、
姿勢にほんの少し変化が見られるようになった。
「ちゃんと話を聞いて!」
「これってこういうことだよね?」
頻繁に声を掛けあって確認する姿は
ぎこちないながらも、全員が話の輪に
参加しているように感じられた。
彼女たちは、これからもこんな調子で
色々なアイディアをぶつけ合うことができるだろうか?
そして、そこから思いもよらない新しいアイディアを
生み出すという経験ができるだろうか?
その経験ができたとき、自ずと予選通過への道が
開けるだろう。
残り6時間。
彼女たちは自分自身の中にある壁を壊すことが
できるだろうか。
◆過去の記事はこちらから
eduq.jp/days/archives/1288