2013年10月08日

「教育と探求」Vol.27 2013/10/8 ”高校生のためのグローバルリーダーゼミ 開催”

おはようございます。

教育と探求社の宮地です。

昨年から沖縄県キャリア教育作業部会の委員を任され年に何回か、沖縄の地に足を運ぶようになりました。

毎回、県職員の方や地元の大学・高校の先生方、コーディネイターのみなさん達と共に、昼に夜にさまざまなお話しをする機会をいただいていますが、どの方もとてもおおらかで、骨太で、人間味に溢れ私自身が大きな刺激を受けています。

戦後の日本の負の部分を担ってきた沖縄。しかし、その土地から育まれる何とも言えない力が人間の根っこをたくましく育てていることを感じずにはいられません。

世田谷区長の保坂展人さんが「学校だけが人生じゃない」というご自身の著書の中で
沖縄という土地が自らの深い部分を癒し、変えてくれた体験についてリアルに綴っています。

保坂さんは麹町中学時代、教師から不当な弾圧を受け内申書が原因で5つの高校に不合格となり、その後16年間にわたり「内申書裁判」を闘うことになります。

しかし、やがて裁判に疲れ、空虚感に苛まれ、全国を彷徨い、ようやくたどり着いた沖縄の地で、本来の自分を取り戻していくのがこの件(くだり)です。

・・・心を解放し、見よう見まねで踊った喜納昌義のコンサート。
岩に血が通ったような感覚を覚え、その血がどくどくと流れる音を感じた。その生命の波は<自意識>の濁りを洗い始めた。長いことこもっていた精神の塹壕から飛び出して、満足と肯定、楽しさの中で物事に当たる回路を得ることができた。

あの日から僕は変わった。

これを読んだとき、私は涙がこぼれました。

まるで保坂さんの体験を追体験しているようなそんな感覚を覚えました。

人が生きるということの根源的な力がここにあると思います。

人は、パンのみによって生きるのでもなければ、偏差値や肩書きによって生かされているわけでもありません。

自らの内面の奥深いところから湧き上がるエネルギーを堰き止めることなく、まずは自分自身がそれを認め、解放すること。

そして、それを大切に受け入れてくれる”場“があること。

そのことがどれほど大事なのか、心からそう感じました。

これからの日本が変わっていくとしたら、もう一度ここに立ち戻るしかないのではないでしょうか?

それこそが未来を生み出す基盤だと思うのです。

沖縄のキャリア教育が、日本のキャリア教育の未来につながっていく、そんな絵が見えるような気がしました。

教育と探求社

宮地勘司

—-【目 次】 ————————————————–

1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト先輩インタビュー
[クラーク記念国際高等学校千葉キャンパス(千葉)]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~

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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)高校生が進路を考えるきっかけをつくるイベント
「飛び出せ世界へ!~高校生のための
グローバルリーダーゼミ」のご案内

来る10月27日(日)TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
にて、日経Bizアカデミーと長崎大学の共同企画による
「飛び出せ世界へ!~高校生のための
グローバルリーダーゼミ」が開催されます。

本イベントでは、各界で活躍する4人の講師が
自らの体験を元に、生きた授業を展開します。
英語の実力を付けたい高校生、自らの進路について
考えている高校生に参加して欲しいと思っています。
保護者のみなさん、学校の先生の参加も
同時に受け付けています。

教育と探求社は、本イベントの企画・運営、
授業づくりのお手伝いを行っています。

日   時:2013年10月27日(日)13:00~18:00
場   所:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
(JR市ヶ谷駅より徒歩1分)
対   象:高校1~3年生、高卒生、および保護者、教師
定   員:300名
受 講 料:無料(応募者多数の場合は、抽選となります)
申込〆切:2013年10月24日(木)
主   催:日本経済新聞社デジタルビジネス局/長崎大

◆詳細・お申し込みはこちらから
bizacademy.nikkei.co.jp/special/gls2013/

(2)「東海クエストミーティング2013」を
桜丘高等学校で開催

来る11月4日(月・祝)愛知の桜丘高等学校にて
「東海クエストミーティング2013」を開催します。
これは、クエストエデュケーション企業探究プログラム
に取り組む東海エリアの中学・高校の生徒と、
クエスト協力企業の社員のみなさんが一堂に会し、
交流を深める場です。

生徒は企業の方々と直接意見交換をすることで、
事業内容や企業理念に対する理解を深め、
与えられた課題への探求を深めていきます。
また、同じ課題に取り組む他校の生徒と交流することで
刺激を受け合い、気づきや学びを共有していきます。

日   時:平成25年11月4日(月・祝)12:00~15:00
会   場:桜丘高等学校

なお、本イベントでは一般の方の受付は
行っておりませんが、関心をお持ちになって
見学等を希望される方は、下記電話番号まで
お問い合わせください。

教育と探求社 ミッションミーティング事務局
TEL:03-6674-1234

(3)「クエストエデュケーションプログラム」
ワークブックの紹介
eduq.jp/workbook/index.html/

クエストエデュケーションのワークブックの表紙に
作品を提供してくれた80人のクリエイターを紹介する
ページを、あらたに開設しました。
一人ひとりの生徒が自分だけのオリジナルの答えを
探求するためのクエストならではの取り組みです。

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2.クエスト先輩インタビュー
[クラーク記念国際高等学校(千葉)]
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このコーナーでは、
「クエストエデュケーションプログラム」
に取り組んだ経験を持つ先輩たちにお話を聞き、
当時感じたことやその体験が今にどうつながっているか
振り返ってもらいます。

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今回インタビューに答えてくれたのは、
昨年のクエストカップ全国大会で
「日本経済新聞社賞」を受賞した
クラーク記念国際高等学校千葉キャンパス
「チーム ビクトリア」の庄山萌々さんです。
goo.gl/rzcC6B (プレゼンテーションの様子)

今年、高校3年生となった庄山さんは、クエストの授業で
「若者が経済に関心を持ってくれるようになる
携帯アプリ」というものを考えたのがきっかけとなって、
現在、商品開発について実践的に学べる
大学への合格に向けて、
AO入試にチャレンジしています。

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先輩インタビュー
【クラーク記念国際高等学校 千葉キャンパス
庄山 萌々さん】

Q.「ゼミ」という選択形式の授業で
クエストに取り組んだそうですが、
この授業を選ぼうと思ったきっかけは
何だったのでしょうか?

A.私の学校では“ミッション・コンプリートゼミ”
という名前で呼ばれているんですけど、
その名前が謎めいていたのと、ゼミ紹介のときに
見せてもらった全国大会のダイジェスト映像が
決め手になりましたね。
「何だか内容はよくわからないけれど、
とにかく楽しそうだぞ!」と、一目で決めました。

Q.実際、やってみてどうでしたか?

A.ミッションを出されたときは、軽く後悔しましたね(笑)
しかも、私のチームが色々な事情があって
9月からたった一人になってしまったんです。
ただでさえ難しいミッションを出されているのに
それを一緒に考えてくれる仲間もいない、
でも、先生からはバンバン企画のダメ出しをされる。
その悔しさを共有する相手がいなかったのが
辛かったです。

でも、不思議と悔しさから逃げようという発想には
ならなかったですね。
「悔しいから、次はどうしたらよくなるだろう?」
ということの繰り返しでした。

最初に考えていたアイディアというのが
自分で今考えてみても微妙な内容だったのですが、
いろんな種類のチョコレートを作って、
チョコの包装紙に経済についてのクイズが書いてある
というものだったんです。
当然、先生や企業の方からは
「この企画は日経でやる必要あるの?」
とコテンパンにやられて(笑)
なかなかそこから抜け出せなかったんですが、
あるとき
「ゲーム感覚で経済のことが知れたら面白いな」
ということを思いついて、ようやく今回の企画に
たどり着いたのが11月頃だったかな。

それを初めてみんなの前で話したとき、
とても緊張しましたね。
どんな風に評価されるだろうって。
たまたま訪問してくれていた教育と探求社の方が
「面白いじゃん!」という言葉を掛けてくれたんです。
その言葉がとても嬉しくて、さらに奮起して
頑張ることができました。
もっともっと面白い企画にするぞ、って。
普段からLINE POPとか、パズドラのような
携帯アプリをやっていたので、実体験の中で感じていた
「こうだったらいいのにな」というアイディアが
どんどん出てきて、だから、全体を振り返ってみると、
辛かったことよりも楽しい記憶の方が残っていますね。

Q.一人だけで考えて作った企画が
見事予選通過したわけですが、
そのときの心境はどうでしたか?

A.嬉しかった反面、「一人で発表できるだろうか…」
と不安にもなりました。
一人で発表するという選択肢もありましたが、
先生が私の気持ちを察して色々考えてくれて
結局、他のチームからメンバーを募って
選抜チームが作られたんです。

Q.全国大会までの3週間、新しいチームを作って
取り組むことで苦労もあったのでは?

A.はい。確かに苦労はありました。
企画を考えたのはすべて私ですから、
途中から参加したメンバーたちにどのような形で
協力してもらったらよいのか、というところで
お互いに微妙な距離があって、
どうしたらよいか悩みましたね。
でも、振り返ってみると、やっぱり楽しかった
という気持ちの方が大きいです。

自分では無意識でやっていたことなんですが、
「とにかくみんなで楽しもう」と言う気持ちで
コミュニケーションを取ることに
かなり時間を費やしていました。
放課後結構残りましたが、何かしていることよりも
雑談して笑っている時間の方が多かったかも(笑)
でも、その一見無駄そうに見える時間が
チームの結束を高めてくれたのだと思います。

それともう一つは、企画そのものの練り直しはせずに
発表の工夫や大道具の制作など、
一緒になってゼロからアイディアを出せる作業だけを
したことも、みんなで一つになれた要因かな。
実際、プレゼンテーションの中で全員が踊る
というアイディアはみんなで集まっているときに、
たまたま私がふざけて踊っていたところを
メンバーの一人が見て
「それ面白いから、プレゼンの中に入れようよ!」
って提案してくれたことがきっかけで生まれたんです。
発表の仕方や小道具作りもそうでしたが、
一人じゃ絶対に生まれなかった作品に仕上げることが
できたなと感じています。

Q.その結果、日本経済新聞社賞を受賞しましたが、
今、どんなふうに感じていますか?

A.一言でいうならば、「無駄なことは何もない」
と感じています。

企画のコアとなるアイディアも、
プレゼンテーションに取り入れた“笑い”や“踊り”などの
表現の要素も、大道具の製作にしても、すべてのことが
これまでやってきたことを生かせたな、と思えたんです。
中学の頃は文化祭でみんなの前でネタを考えて
お笑いやってみたり、高校ではダンスの出し物で
踊ったり、小さい頃から絵や書道を習ったり、
それらすべての点が一本の線になって結ばれたな
という感覚ですね。

たったひとりで考えた企画を「面白いじゃん!」
と褒めてくれたことがきっかけとなって、
自分がさらに頑張れたこと、それによって
一緒に頑張れる仲間と出会え、
悔いを残さずやり切れたこと。
仲間や先生、たくさんの人の助けがあったからこそ
今こうしていられるということを、
身を持って体験させてもらいました。

実際、セカンドステージで発表している途中、
妙に冷静に客席を見渡している自分がいて、
「いろいろと大変だったけれど、やめなくてよかったな」
って。おおげさかもしれませんが、
クエストですべてを手に入れたと思えたし、
この学校に転校してきて本当に良かった
と初めて思うことができました。

◆過去の記事はこちらから
www.kaisei-ngs.ed.jp/

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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む
現場の教師が、生徒と共に日々奮闘する姿を
エッセイ風に書き綴っていきます。

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10月1日「アイディアの種」

今日は先月から引き続き、企画会議。
なかなか突破口が見つからず悪戦苦闘する生徒たち。
しかし、アイディアの種は
意外なところに落ちているものだ。
例えば、私が担当する別の授業にも
大きなヒントがあった。

その授業とは理科の授業で、
生徒たちが日常生活の中で疑問に思う
科学にまつわる不思議について調べ、
ふたり1組のペアになって3分間の発表をする。

その発表の中で、2週間前から気になっている
ペアがいた。
そのペアだけ唯一、何を伝えたいのかが
全くわからない状態になっていたので、
翌週もう一度発表し直してもらうことにしていた。

彼女たちにやり直しをすることを伝えると、
ペアのうちのひとりが、明らかに不服そうな
ふてくされたような表情をしていたのが引っかかった。
結局、彼女が翌週学校を休んでしまったために、
さらに翌週まで発表は持ち越されることになった。

不服そうな表情をしていた彼女のことを
気がかりに思いながらも、ふたりがどのように
リベンジしてくるのか黙って待つことにした。
すると、発表の前日になって、彼女たちの方から
相談にやって来た。
案の上、まったく手が付けられていないらしい。

「せっかくふたりで発表をするのだから、
自分たちらしいテーマにしたら?
たとえば○ちゃんのお家は梨を育てているのだから、
それにまつわることでやったら、面白いんじゃないかな」

1回目の発表後、不満げな表情を浮かべていた彼女が
「そうですよね!私もそう思ってて。
本当は他のテーマでやろうと思っていたんですけど、
そのアイディアいただいでもいいですか?」
先ほどまでの表情から一転して、
明るい表情に変化した。

翌日、ふたりの発表を聞いて驚いた。
姿勢に見違えるような変化があったからだ。
普段、発表する場面があっても、
しどろもどろになりながらボソボソと台本を読む姿しか
見せたことなかった彼女が、
堂々と前を向いて大きな声で発表している。

私と話をした後、家に帰って彼女は
梨栽培をするご両親とお兄さんから話を聞いて、
何枚にも及ぶ資料を作ったらしい。

「先生、調べてきたことが全然喋れなかった。
本当はもっと話したいことがあったんですけど、
時間が足りなくて」
授業終了後、声を掛けると、そんな言葉が返ってきた。
彼女がこんなにも積極的な姿を見せるのは
初めてのことだった。

その数時間後、クエストの授業で生徒たちが
与えられたミッションについての話し合いを進めていた。
その中で、たまたま午前中の理科の授業のことが
話題にのぼり、ひとりの生徒がこんなことを口にした。

「あの理科の授業で体験しているようなことって、
すごく大事なんだと思う」
「へえー、なんでそう思ってるの?」
「だって、自分たちの興味にしたがって勉強できるから。
楽しいから調べるし、
ほかの人の発表を聞いてても楽しい。
調べ学習って、小学校の頃から色々やってきたけど、
自分が興味を持ったことだったら、
どんどん調べたくなるもん。
こういう授業がもっとあったらいいのになって思う」

それを聞いて、数時間前に発表した
梨農家の彼女の姿がはっきりと思い出された。
自分の興味、関心にしたがって動く前と後では
内容も発表する姿勢も、歴然とした差があった。
何より生き生きと輝いて見えた。

自分の興味を追いかける学びを
“Interested Driven Lerning”と呼ぶらしい。
人から押しつけられたものではなく、
自ら面白いと感じたことを探求することによって
得られる学びの方がはるかに成果が大きいという。
彼女たちも、最も苦手とする発表の場面だったが、
自らの興味関心に沿って取り組んだからこそ、
成功体験を得ることができた。

そして、今ここで話し合いをしている生徒たちもまた
自らの内から湧きあがる興味関心にしたがって
学ぶことが、人の力を引き出すということを
直感的に捉えていたのだ。

ファシリテイターとしての教師が、
そのことを深く承認することで、
彼女たちの本音が次々と出てくることとなった。
学びの主役はどこまでいっても、生徒たちであることを
あらためて認識した。

◆過去の記事はこちらから
eduq.jp/days/archives/1276



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