2013年09月10日
おはようございます。
教育と探求社の宮地です。
2020年のオリンピック・パラリンピックの開催が
東京に決まりましたね。私も朝までテレビの前で
招致チームのプレゼンテーションを見ていましたが、
内容も構成も素晴らしく、発表者の熱意も
十分に伝わるものでした。
ここに至るまでどれほどのプロセスを積み上げてきたのか、
素直に関係者の努力を称えたいと思います。
直前には福島原発の汚染水の問題が報じられ、
これほど深刻な問題を国内に抱えたままで、
海外から大勢の客を招くような催しを
実施するべきではない、まずは事故処理を終えるべきだ
という意見も一部聞かれました。
これはある意味、まっとうな意見だと私は思っています。
しかし、東京での五輪開催が正式に決定した今、
大事なことは、これからの7年間を日本は
どのように過ごすのかということではないでしょうか。
7年後には、今年生まれた赤ちゃんが小学生となり、
小学6年生は大学生になり、高校生はすでに
社会で働いています。その時の日本の風景は
どのようなものになっているのでしょうか?
個人にとっても、企業にとっても
フェアで健全な競争環境は整備されているでしょうか?
その上で、共にわかち合い、助け合うことができる
「共生社会」は実現できているでしょうか?
政府は、自らのやるべきことをシンプルかつ
効果的に行い、そこに連携する主体的市民は
きちんと育っているでしょうか?
世界最速で進む高齢化社会への処方箋を、
日本は世界に示すことができているでしょうか?
覇権ではない、新たなリーダーシップのカタチを
同じく、世界に示すことができているでしょうか?
人々が笑って暮らせる幸福な国になっているでしょうか?
そして、これらのことを生み出し、支えていく人間たちを
きちんと育てることができているでしょうか?
前回の東京オリンピックが開催された1964年は、
終戦からわずか19年後です。
私たちの先輩は、奇跡の復興を遂げた日本の姿を
この場で世界に披露することができました。
2020年までに、私たちは、私たちの宿題を
やり遂げなければなりません。
これから7年の間で日本の教育に
どれほどの貢献ができるのか、私ももう一度
褌を締め直して頑張りたいと思っています。
7年後、世界中からこのスポーツの祭典に集う人々を
安全な国土と、すばらしい国民でおもてなししたい。
心からそう願います。
教育と探求社
宮地勘司
—-【目 次】 ————————————————–
1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト先輩インタビュー
[海星中学校・高等学校(三重)]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)高校生と社会をつなぐイベント
「イノベーションフォーラムin つくば 2013」開催
去る8月20日(火)~22日(木)
茨城県つくば市にある、つくば国際会議場にて
「イノベーションフォーラムin つくば 2013」
が開催されました。
第1部は「日経エデュケーションチャレンジ2013」。
全国から1,142名もの高校生が集まり、
ノーベル賞物理学者の江崎玲於奈氏をはじめとする
研究者や第一線で活躍される企業人の
白熱した授業を聴き、たくさんの刺激を受けました。
続いて開催された第2部では、
科学に関心のある高校生212名が
つくば市にある23の研究室を訪問し、
出された課題に取り組みました。
研究している技術を活かした新たな商品開発や
科学技術の魅力を伝える広報計画などを
チームで考え、提案しました。
当日の模様は、9月下旬の日本経済新聞朝刊に
掲載される予定です。
(2)「ミッションミーティング2013WEST」を大阪で開催
来たる9月14日(土)、大阪の常翔学園高等学校にて
「ミッションミーティング2013WEST」を開催します。
これは、「クエストエデュケーション・企業探究コース」
に取り組む西日本の中学・高校の生徒と、
クエスト協力企業の社員のみなさんが一堂に会し、
交流を深める場です。
生徒は企業の方々と直接意見交換をすることで、
事業内容や企業理念に対する理解を深め、
与えられた課題(ミッション)への探求を深めていきます。
また、同じ課題に取り組む他校の生徒と交流することで
刺激を受け合い、気づきや学びを共有していきます。
詳細は以下の通り。
日時: 平成25年9月14日(土)14:00~17:00
会場: 常翔学園高等学校
なお、本イベントは一般の方の受付は行っておりませんが、
関心をお持ちになって見学等を希望される方は、
下記電話番号までお問い合わせください。
教育と探求社 ミッションミーティング事務局
TEL: 03-6674-1234
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2.クエスト実践事例紹介
[海星中学校・高等学校(三重)]
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このコーナーでは、「クエストエデュケーションプログラム」
を導入している学校の授業での様子や、
ご担当の先生のインタビューを紹介します。
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今回インタビューを行ったのは、
昨年度からクエストを導入した
三重県四日市市にある海星中学校・高等学校です。
同校は1597年に聖ヨゼフ・カラサンスによって創立された
世界的なカトリック修道団体「エスコラピオス会」によって
設立されたミッションスクールで、
「健全な身体と高い教養を持つ円満な人物を養成すること」
「神の掟に従い、人を導く良心の求めに適う健全な人物を
養成すること」という教育理念を掲げ、
進学校というだけではなく人格形成を重点方針として
さまざまな取り組みを行っています。
kaisei-ngs.ed.jp/
クエストの授業は中学3年と高校1年の
総合学習の時間を使って、クラス担任が指導しています。
2年目となる今年も大半の先生がクエスト初体験。
昨年度の授業経験者で今年はサポート役を務める
瀬川先生は
「どのようにしたら先生たちが前向きに、
楽しくクエストに関われるか」
ということに、特に力を注いでいるそうです。
今回、瀬川先生には昨年の授業を
振り返っていただくとともに、
毎年授業運営する教員が変わる体制の中で
いかにサポートして、このプログラムの理解を
校内へ広めていけばよいかについて
お話をうかがってきました。
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先生インタビュー【海星中学校・高等学校 瀬川智紀先生】
Q.クエストを導入してよかったな、と思うところは
どんなところですか?
A.保護者や教員以外の大人たちと生徒が
触れ合えるというところですね。
実は、そのようなシチュエーションって
意外と少ないんです。
本校では大半の子どもたちが部活に入っているので、
放課後だけでなく休日も部活をしており、
学校外で社会の大人たちと触れ合う機会が
ほとんどありません。
だからこそ、クエストに関わる企業の方々や
教育と探求社のみなさんと非常に近い距離で、
しかも一年という長期に渡って関係が続くということが
貴重なことだと感じています。
ほかにも、外の大人と触れ合う機会も
あることはあるんですが、
それとはちょっと違うんですよね。
例えば、外部講師を招いて講演会という場合、
クエストとの明らかな違いは
「大人と子どもとのインタラクティブなやり取りが
あるかどうか」という点だと思います。
講演会は大抵の場合、一方的に話を聴いて
最後に質疑応答で言葉を交わす程度ですよね。
大人であれば、講演を聴いた内容について
これまでの経験や、持っている知識とすり合わせながら
自分なりの言葉に翻訳して消化できますが、
子どもは大人よりも経験値や知識が少ないから
聴いた話を自分の中に十分落とし込むことができず、
“ただ聴くだけ”で終わってしまうわけです。
だから、子どもたちにとって
あまり残るものがないんですよね。
それに対して、クエストでは企業の方々や
教育と探求社のみなさんが
学校に何度も足を運んでくれて、
子どもたちの話合いに積極的に参加し、
同じ目線でコミュニケーションを取ってくれます。
子どもたちは自分の知らない世界の大人と触れ合う中で
いろんなことをじっくり感じ取っていますよね。
単に企画を考えるための気づきや発見だけではなくて、
働くとはどういうことなのか、とか。
その経験がものすごく子どもたちを成長させてくれたな
と感じています。
それともう一つは、教科という視点でしか
子どもたちと関われない教員に
一人ひとりの子どもたちの違った一面を
見せてあげられたことですね。
通常の授業の中で見られる子どもたちの姿からは
ごく限られた側面しか知ることができません。
それは例えば、手を挙げる積極性だったり、
授業態度だったり、テストの点数だったり、
どうしても数値化できる観点でしか
子どもたちを見ることができないんですよ。
それがクエストでは、一人ひとりの個性や強みが
はっきりと見えてくるんです。
授業では発言することができず目立たない子が
一生懸命スライドを作っていたり、
大きな声で発表していたり。
クエストをしていなければ見えてこなかった
子どもの姿を見ると、担任の僕ですら驚くわけですから、
ほかの先生なんか、もう感動ものですよ。
「おー、あいつ、やるじゃないか!」って。
それが伝わって子どもたちが自信を持ったり、
先生方の関わり方が変化したり。
これだけでもクエストをやってよかった、って思えますね。
Q.体育祭や文化祭などの学校行事で
生徒たちがその企画を考えて、学校に提案する
という状況があると思いますが、
大人に提案するという意味では似ていますよね。
それとクエストって何が違うのでしょうか?
A.どちらも大人に向けて自分たちの考えを提案する
という点では同じですが、クエストは
社会とリアルにつながっていることによる
“客観性の高さ”という点が明らかに違うと思います。
体育祭や文化祭のような校内でのイベントを
企画立案した場合、学校の教員や保護者といった大人、
それから学校の生徒たちからの反応によって
評価をもらいますよね。
でもその評価って、結局、身内による評価だから
どうしても贔屓目に見てしまう甘さがあると思うんです。
だから、企画を考えた当人も「あー、ここがダメだったな」
という主観的な見方でしか反省できないわけです。
それを“主観的な失敗”というならば、
クエストで体験する失敗は“客観的な失敗”となるわけです。
つまり、学校を離れた社会にいる第三者からの
厳しい評価にさらされるということです。
クエストカップの予選審査や
全国大会で下された結果というのは、
自分の主観的な評価が
ある意味メッタ斬りにされるわけで(笑)
客観的に自分の取り組みを
見ざるを得ない状況に置かれるわけです。
両者の学びの量や深さは、
明らかに後者の方が大きいと思いますね。
実際、クエストの授業を受けた
生徒たちの勉強に対する取組み方や
考え方の変化は少なくないと感じています。
Q.生徒たちが企画を考えるとき、
作業が上手く進むように担当する先生たちで
協力して、工夫していることがあるそうですね。
A.はい、そうですね。
一人の先生にできることは限られているから、
まずは担当する先生たちと、6つの企業を分担して、
その先生を中心にブレストを重ねて
ミッションについての情報や考えを共有しています。
暇さえあれば、みんなでブレインストーミングをして
アイディアを出し合っていましたね。
なぜそんなことをしているかというと、
子どもたちができるだけたくさんの考えに出会い、
自分の琴線に触れる機会を作ってあげたいからです。
話合いで行き詰ると、子どもたちは先生に
質問しに来ますよね。
そのとき、教室で担任の先生だけがアドバイスしたり、
考えを話すだけでは、もったいないと思うんです。
学校の中にはいろんな考えや情報を持った
大人がいるわけですから、どんどん質問しに行けと。
その中で「どれを取捨選択するかは
最終的には自分が決めるんだよ」ということをいって、
いろんな価値観に触れさせるわけです。
そのための準備として、
学校全体で6企業分のミッションを考えられるように
クエストに関わっていない先生も巻き込む努力をしました。
具体的には、先生たちとちょっとした雑談をしているときや、
すれ違いざまに「人が生きる原点ってなんだと思う?」
なんて、ミッションに関する質問をするんです。
そうすると、質問された方は
「何なん?その哲学的な質問は」
と、最初は度肝を抜かれるわけですよ(笑)
でも、段々と先生たちも楽しくなってしまって、
しまいには座り込んでブレストすることがあったり。
そんな風にして何気ない会話から、
少しずつみんなで考えていく機会を作っていきました。
Q.御校では、担任の先生が授業をしていますが、
瀬川先生ご自身は、授業サポーターという立場として、
どういった点に気をつけて授業運営を行っていますか?
A.一番面倒な事務的な所をすべて引き受けるところかな。
それは例えば、契約書関係の手続きであったり、
教員の事前研修会の日程調整や運営、
クエスト関連の校内・校外でのイベントの取りまとめとか。
できる限り授業をされる先生たちの負担を減らして、
環境整備をするのが自分の役目だと認識しています。
先生たちに集中して生徒と向き合ってもらいたいから。
本音をいうと、昨年のクエストの授業で
誰よりも楽しんでやっていたから、
ガッツリ関わりたいんですよね(笑)
でも、そうしてしまうと
“僕の授業”になってしまうじゃないですか。
「瀬川にしかクエストの授業はできないよね」
という雰囲気に校内がなってしまうのは
絶対にダメだと思うんです。
大勢の先生が関わるプログラムだから、
協力体制ができていないと
絶対に成功しないプログラムだと思います。
だから僕は積極的に介入しないで、
授業する先生たちにすべてお任せ。
困ったときだけアドバイスをするようにしています。
それが校内で上手くやっていく秘訣かもしれません(笑)
今年2年目となりますが、
先生たちは非常に前向きに取り組んでいますね。
僕の関わり方が影響しているかどうかはわかりませんが、
少なくともいえるのは
「一人ひとりの先生が明確な目標を持って
授業に関わっている」というところが
よい雰囲気で授業を進めるためのポイントだと感じます。
例えば、昨年僕と一緒にクエストの授業を担当した先生は
「『瀬川だからできる』ではなく、『どの先生にもできる』授業
だということを周りに示す」ことを目標にして、
だれよりも熱く授業を進めてくれています。
それから、別の先生は
「去年の生徒たちの悔しさを引き出して、
もっともっと成長させたい」と言って、奮闘しています。
このプログラムを自分事としてとらえて実践しており、
今年の授業は昨年よりも順調に進んでいるように感じます。
このプログラムって、確かに綿密に考えられていて
素晴らしいんですが、プログラムが素晴らしいからといって
自動的に良い結果が出るわけではないと思うんです。
最後に命を吹き込むのは先生たちの思いの部分かな、と。
「クエストの授業を通して子どもたちに何を伝えたいか」
ということがあって、それを実現するために
工夫しながら進めるから、子どもたちの変化や
成長があるのだと思います。
だから2年目の先生は、自分の掲げた目標を逆算して
各ステップの授業で+αのことを
自然と考えられるようになるんですよね。
先生たちがこんな風に協力し合って
取り組んだ今年のゴールがどんな風になるのか
とても楽しみです(笑)
◆過去の記事はこちらから
eduq.jp/interview/?p=640
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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校で
クエストに取り組む現場の教師が、
生徒と共に日々奮闘する姿を
エッセイ風に書き綴っていきます。
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9月2日「インタビューの重要性に自ら気づく」
2か月ぶりに再開した授業では
大まかにまとめた企画案をホワイトボードの全面を使って
書くところから始めた。
ホワイトボードの一番上には
「企業から与えられたミッション」、
その下の中央には「企画のコンセプト」を大きく書き、
両脇には「ターゲット」と
「企業が現在取り組んでいるサービスや商品」、
下のあまったスペースすべてを使って
「企画の内容」を書くように指示した。
ホワイトボードに書く最大のメリットは
自分たちの企画の全体像が一目でわかるので、
「企画内容がコンセプトを
しっかり実現するものになっているか」とか、
「企画内容と企業の取組みやサービスとがどのように
紐づいているか」等、さまざまな視点で
“与えられたミッションと自分たちが考えた企画との
ギャップ”を見ることができるところにある。
また、ワークブックや模造紙に書くのと違って、
言葉を書く位置やスペースを気にせず
自由に消すことができるのも彼女たちにとっては好都合だ。
そして、最終的には書けるスペースは限られているので、
必然的に余分なものをそぎ落としていく力や
要点を一言でまとめる力をつけることも狙っている。
「今、ホワイトボードに書いてくれたものが
みんなの頭の中にあるアイディアのすべてだよね。
ということは、ここに書かれた内容が
これから毎週更新されていく、ってことだ。
ホワイトボードを使って、どんどん
この企画をブラッシュアップしていくんだよ」
そう言って、今後は授業が始まる前までに
前回の授業終了時にホワイトボードに残した企画案を
再現して書いた状態にしておくことを指示した。
「さて、これを見て、みんなはどう思う?
みんなが考えたコンセプトを
この企画内容は実現してくれそうかな」
「なんか微妙」
「全然実現できそうにないや」
「じゃあ、どうしたらこのコンセプト『○○な○○』を
実現できそうだと思う?」
その問いかけに反応して、すぐに
こうじゃないか、ああじゃないか、と
アイディアが出始めた。
「そういえば、インターネットでこんなことが
書かれていたよ」
「それってどんな内容だっけ?」
「うーん…なんだっけか。とりあえず書いとこ」
曖昧な記憶を辿りながら、これまでのブレストや
ネットで調べた情報を見直しながら箇条書きしていく。
ここで大事なのは、ブレストのときと同じく
「とりあえず書く」ということ。
どんな些細なことも、ホワイトボードに
まずは書き込むことを習慣化させる。
それが、私の一つの大事な役割だ。
ちょっと離れたところで黙って眺めながら、
気になる言葉が出たら、まさにそのタイミングで
「それってどういうことだっけ?」と本人に説明させたり、
その説明してくれたことをわかりやすく要約して
ほかのメンバーの理解を深めてあげたり、
「今言った言葉、めちゃくちゃ面白い!」
と承認しながらも、さらにそこに注意を向けさせて
彼女たちの頭の引き出しの中にあるアイディアを
出し切る手伝いをする。
こうして30分も繰り返していくと、
毎年恒例の“停滞モード”に入っていく。
今の段階で出てきたアイディアは
彼女たちの直感やイメージに頼ったものと、
インターネットに散乱している情報を
浅く拾いあげただけのものがベースとなっているので、
当然のことながら、そこらじゅう穴だらけで
大した根拠もない。
その企業がやる必然性もよくわからない
企画になっているのだ。
それを承知の上で、まずは自由にやらせる。
不穏な空気が流れ、沈黙がしばらく続く。
「あぁー…空気がどんよりしてきた。
もう無理だわ、鬱になりそう!!」
「そろそろ限界になったか。
もうこれ以上出なそうだよね。どうしよっか?」
これ以上何をしたらよいかわからず、全員黙っている。
「考えてみなよ。たった6人で出すアイディアなんて
たかが知れてるじゃん。
みんなさ、この企画のターゲットの人たちの気持ちになって
アイディア出してくれたけれど、
その人たちの立場になりきれた?」
「うーん…」
「私、その経験したことないしな~」
「想像しても、なんかいまいち浮かばない」
「周りにはそういう友達もいたけど・・・」
「そうだよね。
まったく同じ立場になってみなきゃ
わかるわけないんだよ。
でも、同じ立場になってもらうことはできないよね。
だとしたら、どうしたらわかるかな」
こうして、考える企画のターゲットになる人たちや
その周辺にいる人たちへのインタビューが
いかに大事か、彼女たちは本当の意味で理解した。
自分たちの頭の中から出てきたアイディアには
限界があることも、インターネットで調べただけでは
どうにもならないことを実際の状況の中で味わい、
行き詰まる体験をすることで、初めて調査の重要性を知る。
来週の授業までに、ターゲットからのインタビューを
可能な限り集めてくることを、彼女たちは決めた。
この企画を実現するためには、
ターゲットとなる人たちの生の声を
いかに拾いあげるかが重要であることを理解していく。
彼女たちは、次のステージにようやく突入した。
◆過去の記事はこちらから
/eduq.jp/days/archives/1268