2013年07月09日

「教育と探求」Vol.24 2013/7/9”天活塾開催”

おはようございます。
教育と探求社の宮地です。

この度、教育と探求社は
「天活塾」という取り組みを始めました。

「天活塾」とは、いろいろな企業から
いろいろな働く人たちが集まり、泊まり込みで
自らの人生を語り、交流することで、
自身本来の在り方や未来へ向けての道を
見つけていく取り組みです。

すべての人に「天職」がある、と私は思っています。
生まれながらに与えられたギフト(天賦の才)があり、
それを活かして生きることで周りを幸せにし、
自らも幸せになることができる、そんな仕事や働き方が
だれにでも必ずあると思っています。

景気回復の力が芳しくなく、大学生の就職難が定着し、
非正規雇用者が増え続ける時代の中では
そのような考えはあまりに理想的に
聞こえるかもしれません。

しかし、見方を変えると、日本の経済力は
国民すべてを養えるほどに十分に豊かであり、
ICTや新エネルギー、介護や教育など
さまざまな分野で新しい事業が興り、
多様な働き方を容認する文化も確実に浸透しています。

大切なのは働く人々の意識です。
正体のない不安や恐怖に苛まれたり、
何かにしがみつこうとすることをやめて
「私がこの人生において本当に大切にするものは何か?」
それを深く探求しながら、自らの人生を潔く生き切ること。
一人ひとりがそうなることで、この世界が変わる
と思うのです。

人は「天職」を生きるとき、歓びに満ちて、言い訳もなく、
やるなといわれても思わずやってしまう。
すべての人がそんな働き方ができるような社会を
つくることが私の夢です。

「天職とは何か?」という問いは、
どこの会社で働けばよいのかという問いではなく、
どんな職種が向いているのかという問いですら
ないのかもしれません。

何か自分の大切なもののために一所懸命に生きること。
そんな在り方、生き方の中に、その答えがあるはずです。

それに気がついたとき、今足下にあるまさにその仕事が
その人の「天職」となるのだと思います。

教育と探求社
宮地勘司

—-【目 次】 ————————————————–

1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト実践事例紹介 [西大和学園中学校(奈良)]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~

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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)第一回「天活塾」開催

去る6月28日(金)、29日(土)の2日間、
教育と探求社の新しい取り組み
「天活塾」が開催されました。

「天活塾」とは、働く大人たちが
他社人材との交流を通じて、自らの「天職」を
見つけていく活動です。
初回となる今回は、さまざまな企業から
12名の方にご参加いただき、
それぞれの未来を展望しました。

◆当日の様子はこちらから

http://eduq.jp/news/?p=4416

(2)CAミーティング開催

去る7月3日(水)、日本コカ・コーラ本社
(東京都渋谷区)にて、「CAミーティング」を
開催しました。

このミーティングは、「クエストエデュケーション
企業探究コース」に参加する企業の方々と先生方が
一堂に会し、相互に交流しながら、この一年間、
生徒の学びをサポートするための準備を整えるものです。
全国から70名以上が参加し、
時間が経つのを忘れてしまうほどの
盛り上がりをみせました。

◆当日の様子はこちらから
http://eduq.jp/news/?p=4424

 

(3)ミラセン「ティーチャーズミーティング」のご案内

この7月下旬、東京、大阪の2都市において
「ティーチャーズミーティング」を開催します。

このミーティングは、孤軍奮闘する志ある先生方が
集い、つながり、市民がそれをサポートすることで
よりよい教育の実践を実現していこうという試みです。
一般の方も、教育の未来に関心をお持ちの方は
下記日程をご確認の上、是非ご参加下さい。

日 時 :平成25年7月20日(土)15:00~17:45(大阪)
平成25年7月28日(日)13:00~16:30(東京)
会 場 :常翔学園中学校高等学校(大阪)
渋谷教育学園渋谷中学高等学校(東京)
対 象 :教師/ 先生を応援したい市民
参加費:無料

◆詳細・お申し込みはこちらから
http://www.wazoo.jp/ja/events/open/1519(大阪)
http://www.wazoo.jp/open/0728/(東京)

(4)日経エデュケーションチャレンジ2013のご案内

第一線で活躍する研究者や企業人が講師となり、
高校生に向けて、授業を行います。

13回目となる今回は、つくばに会場を移し、
ノーベル賞学者の江崎玲於奈氏をはじめとする研究者や、
さまざまな企業人講師による20もの授業が展開されます。

教育と探求社は、本イベントの企画、運営、
授業づくりのお手伝いを行っています。

日   時 :2013年8月20日(火)12:20~17:30
場   所 :つくば国際会議場
参加資格:高校生
定   員 :1,000名
参 加 費 :無料
主   催 :茨城県、茨城県教育委員会、つくば市
つくば市教育委員会、日本経済新聞社

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2.クエスト実践事例紹介 [西大和学園中学校(奈良)]
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このコーナーでは、「クエストエデュケーションプログラム」
を導入している学校の授業での様子や、
ご担当の先生のインタビューを紹介します。

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今回も前回のインタビューに引き続き、
奈良県にある西大和学園中学校の
宮北純宏先生と谷口弘芳先生から
お話しをうかがってきました。

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先生インタビュー(後編)
【西大和学園中学校 宮北 純宏先生・谷口 弘芳先生】

Q.クエストの授業で苦労したことは?
また、どのようにして解決していったか?

A.谷口:チームで話し合いをしているとき、
やる気のない子や気後れして意見を言えない子を
どうやって話し合いに混ぜるか苦労しました。

どのグループもそうでしたが、必ず一人は
主体的に動く子がいて、そういう子を見ると
「こいつがやってくれるからやらなくていいや」
と、上手く手を抜くんですよね。
そういう子に対しては、私たちが全体を眺めながら
リーダーにそれとなく意見をうながしてもらうよう
アプローチしていました。

一方、気後れして自分の考えが出せない子については
一人ひとり呼び出して話をしました。

例えば、西大和ハウスチームの場合でいうと
主にふたりの生徒が提案したいものがはっきりあって、
ふたりが議論するのをまわりが黙って見ている
という構図になる傾向がありました。
そこで、まずはそのふたりをそれぞれ呼び出し、
どこで意見がぶつかっているのか明らかにしてあげました。
それから、違う夢や思いを持っていても
お互いが納得できる企画というのが必ずあるということ、
ふたりだけの企画じゃないという話もしましたね。

気後れして話ができない生徒たちに対しては、
この企画はみんなで思いを寄せ合って作るものなんだ
ということを何度も話しました。
その上で、どんなことをしたいのかじっくり聞いてあげて、
みんなの夢を重ね合わせるためにどうしたらよいか
その重ね合わせ方を話し合ってごらん、とうながしました。

Q.クエストプログラムを生徒たちに取り組ませる中で
心がけてきたことは?

A.宮北:まずは、生徒自らの行動で
答えを見つけ出すようになる発問の仕方を
心がけたことですね。
今までの生活では、答えが用意されている環境で
育ってきているわけですから、その部分については
相当神経を使って、指導してきたと思います。

第二に、いかに相手の立場に立って
考えることができるかですね。
このようなことから、「道徳」の時間の一部を
クエストにしていた意味も大きかったと考えています。

それともう一つは、クエストの授業が終わった今でも
意識し続けていることなんですが、
生徒たちの心についた“火”を燃やし続けることです。
クエストって「プログラムが終わったからそれで終わり」
では決してないと思うんですよ。
ここから学んだことを、どう次につなげていけばよいか、
私たち教員が考え続けることが大事なんです。

実際、昨年クエストに取り組んでいたときも
私だけではなく、担当する学年の先生方が自然と
「クエストが終わったら、
次にどのような受け皿を用意したらいいか」
ということを議論するようになっていましたね(笑)

クエストをやる前までは、大部分の先生方が
「なんとなく良さそうなプログラムなのはわかるけれど、
それが何につながっていくのかイメージできない」
といっていましたが、クエストに取り組む生徒たちの
真剣な表情や話し合う姿を見るうちに、
その価値を教師の直感で感じ取るわけです。
「これはクエストの中だけで終わらせたらもったいない!」
って。

このムーブメントが学年団に広がったおかげで、
今年は教員研修の際谷口が旗揚げ役となって
学年団全員で教育理念と行動指針を作成しました。
決して“やらされて”作成したのではなく、
全員が教育理念を共有することに賛同し、
自分事としてやることの大切さを
生徒たちから学んだからこそ実現できたのだと思います。

それから、これもクエストの影響だと思うのですが、
各授業で先生たちのマインドが
「教科を通じて生徒の数値化されない部分と
いかに関われるか」
というように変化しています。
生徒たちだけでなく、先生もクエストで
大いに刺激を受けているようです。

Q.先生方にとって、クエストをやろうと思った
一番の目的は何ですか?

A.谷口:“本物の仕事”を彼らに体験させることです。
これまで学校の中で職業体験することは
たくさんありましたが、結局は数日なんとなく
働いている人のそばにいて、仕事の内容を見て
帰ってくる程度で終わってしまうんですよ。
それがすごく不満で。

社会で仕事をするということはプレゼンで上手くいかずに
悔しい思いをしたり、アイディアが出てこなくて
苦しかったり、いろいろな壁を乗り越える体験を
することだと思うんです。
そして、それは何かを作るプロセスに関わらないと
本当の意味では理解できないですよね。

クエストの素晴らしいところは、
企業からミッションに答えるという
明確なゴールに向かって
一つ一つのプロセスを踏むことだと思います。
「do」だけでなく「plan」まで体験できる
このプログラムは本当に素晴らしいです。

宮北:従来あった職業体験について
私もずっと疑問に思っていたんです。
単発的だし、そこで行われることが本当に
生徒のニーズに合っているのだろうか、って。

そこで、試行錯誤して企業の人を呼んで
先生役になってもらって、
自前で試してみようとしたのですが、
やらなければならないことが多過ぎた。
さらに、いくら学校でやれたとしても、
これが社会でどれだけ使えるのだろうかというところが
クリアにならなかったんです。
そんなときにクエストに偶然出会って、即決でしたね。
「これがまさに求めていたものだ!」って(笑)

運命的な出会いをしたクエストと一年関わってみて、
今思うのは近江商人の行動哲学である
「三方良し」※という言葉です。

つまり、クエストを通じて生徒のみならず先生も、
それに関わる企業人もすべての人に学びがあり、
刺激を受ける。
だから、是非もっと多くの学校で
この教育が広がってほしいなと思います。

※「三方良し」とは、江戸時代中期に活躍した
滋賀県琵琶湖周辺出身の無名商人が
行動理念にしていたもの。
売り手だけが得をするのではなく、
売り手・買い手・世間のすべてが心の底から満足するような
商いをすべき、という意味のことば。

◆過去の記事はこちらから
http://eduq.jp/interview/?p=640

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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む
現場の教師が、生徒と共に日々奮闘する姿を
エッセイ風に書き綴っていきます。

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7月1日「全国大会へ出場したことの意味」

このプログラムを授業で取り入れて早4年。
これまでに約20チームもの生徒たちを指導してきた。

幸運なことに、1年目から
全国大会に出場するチャンスをもらい、
昨年は企業賞を受賞することもできた。

そのおかげで、私が教えている学校の存在も
少しずつだが人に知ってもらえるようになり、
彼女たちのプレゼンテーションを褒めてもらう場面にも
遭遇するようになった。

先日も、当日の彼女たちの発表を見ていた企業の方から
「あんなに素晴らしいプレゼンテーションが
できるようになるなんて生徒さんたちの力って
すごいですよね」という声を掛けてもらった。

それを聞いて、ふと、こんなことが頭に浮かんだ。
それは、全国大会に出場した子どもたちと
選ばれなかった子どもたちに何か違いがあっただろうか
ということ。

結論からいうと、“出場が決まるまでは何ら違いはなかった”
というのが、これまで指導してきたチーム
すべてを振り返ってみて実感していることだ。
もっというと、取り組む姿勢やチームワークで見たら
選ばれたチームよりもむしろ別のチームの方が
適任だったのでは、と思うこともあった。

この3年間で3チームを全国大会へと送り出してきた。
そのチームの作品が審査員である企業の方々の「感性」を
何かしら動かしたということは間違いないが、
決してずば抜けたものがあったわけではない。

昨年、全国大会に出場したチームの発表もそうだ。
http://questcup.jp/2013/award/mov/cola2013.php

彼女たちに劇的な変化を与えてくれたのは
実は、予選通過が決まり、発表本番までのわずか3週間。
大きな大会で優勝するという
シンプルな動機もあっただろうけれど、
彼女たちの姿を見ていると、決してそれだけでは
なかったようだ。

なにが彼女たちをここまで駆り立てたか。
それは、「学校と離れた場で大人たちとつながる」
という経験だと思う。

彼女たちにとって、モニター越しに課題を与えてくれる
企業の先輩社員に過ぎなかった大人たちが、
目の前で真剣に自分たちの作品を見て、感動し、
心から出てきたことばをもらった瞬間の表情。
今まで接点のなかった大人たちから注がれる
真剣な眼差しやことばは、彼女たちに
“自信の種”を蒔いてくれるのだ。

幸運なことに、彼女たちは全国大会終了後も
再度、社長をはじめとする大勢の社員の方々の前で
プレゼンテーションをする機会をもらい、
実質3か月もの間、自分たちの作品と
向き合うことができた。

“自信の種”を蒔いてもらって以来、
社長プレゼンまでの彼女たちの行動や
発することばには明らかに違いがあった。
それはまだ見ぬ聴衆をしっかりと意識して
発表しようとする姿勢に表れていた。
「どうせやるなら、この自販機を商品化してもらえるよう
社長に伝わるような発表をしようよ!」
誰からともなく、自然とそんな声が出てくるように
なったのは、彼女たちの中に“自信の種“が
育った証だと思う。
明確な目標を掲げることで、彼女たちの気持ちが
日に日に高まっていくのを感じた。

社長プレゼン当日、彼女たちを
さらに後押ししてくれることがあった。
それは審査を担当してくださった方々が
入れ替わり立ち代わり、温かい眼差しと
心からの励ましのことばを掛けてくれたこと。

社会の第一線で働く大人たちが彼女たちに向ける
眼差しやことばが大きな力を与えてくれて、
最高のプレゼンテーションで有終の美を飾ることができた。
そして、彼女たちは賞よりももっと大きな
「自分に誇りを持つ」ということを手にすることができた。

今年クエストに取り組んでいる生徒たちは
それぞれが全国大会に出場すること以前に
明確な目的を持っている。
それは例えば、自分の将来の夢を実現するため
であったり、苦手なことと向き合うことであったり、
全国大会に出場することの先にあるゴールを見据え、
この授業を選んでくれているのだ。

全国大会までようやく折り返し地点。
ここからが本格的に辛く苦しい道のりとなるが、
その道中でたくさんの大人と触れ合い、
“自信の種”を蒔いてもらいたい。

◆過去の記事はこちらから
http://eduq.jp/days/archives/1250



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