2012年10月03日

「教育と探求」Vol.15 2012/10/3 ”体験型環境教育プログラム『未来×エネルギープロジェクト』”

こんにちは。
教育と探求社の宮地です。

先月9月24日(月)、京都市立明親小学校で、
小学5年生を対象に体験型の環境教育プログラムを実践しました。
題して「未来×エネルギー プロジェクト」。
子どもたちが自分の力で未来のエネルギーを見つけ
その集め方、使い方までもあわせて提案するというものです。

この企画は、ソフトバンクグループ(*)と教育と探求社が協力し、
地球の未来とエネルギーの未来を子どもたちとともに考えていこう
という試みです。

「みんなの怒りのエネルギーを集めてワクチンをつくる」
「雷のエネルギーをためて企業に電気を送る」
「CO2をエネルギーに変えてみんなを幸せにする」
など、小学生ならではの斬新な提案がたくさん出されました。

授業の最後に子どもたちから出た、まとめの言葉は以下の通り。

「未来は自分たちの力で変えられる。
自分たちが未来の新しいエネルギーを見つけるんだ」

子どもたちの可能性に大いに驚かされた1日でした。

なお、当日の模様は京都新聞、KBS京都(テレビ)他
多くのメディアで報じられました。
http://goo.gl/5N9jp (京都新聞 掲載記事)

今後も「未来×エネルギー プロジェクト」の実施校を
拡大していきたいと思います。

教育と探求社
宮地勘司

*ソフトバンクグループ
(SBエナジー株式会社、株式会社エデュアス)

—-【目 次】 ————————————————–

1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト実践事例紹介 [千葉商科大学付属高等学校(千葉)]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~

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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)「未来をつくる1,000人の先生プロジェクト
~教育フォーラム 『ミラセン2012』」開催のご案内

志ある教師が集い、思いを共有しながら学び合い、
高め合うことで、日本の教育を向上させる
「ミラセンプロジェクト」を始めます!

記念すべき第1回のフォーラムは、教育のさまざまな分野で
活躍されている方々のスピーチやトークセッションに加え、
参加された方々で語り合う「ワールドカフェ」も予定しています。

日 時: 平成24年10月14日(日)13:30~17:30
会 場: 中央大学駿河台記念会館 2F 281号室
(東京都千代田区神田駿河台3-11-5)
パネリスト: 保坂展人(世田谷区長)
田村哲夫(学校法人渋谷教育学園理事長)
宮台真司(社会学者、首都大学東京教授)
リヒテルズ直子(日本イエナプラン教育協会代表)
司   会:  伊藤聡子(フリーキャスター)
対象者: 教師・学校関係者・メディア関係者
定  員: 250名
参加費:  教師 1,500円
一般 2,000円
◆詳細・申し込みはこちらから
http://www.wazoo.jp/open/mirasen2012/
Facebookページ:https://www.facebook.com/mirasen.jp
Yahoo! 掲載記事:http://goo.gl/lfg0J

(2)「クエストエデュケーションプログラム」体験会のご案内

「クエストエデュケーション・企業探究プログラム」
の体験会を開催します。

楽しみながら実在の企業について学ぶ本プログラムを、
現場の先生方にも実際に体験していただく試みです。

効果的なプロジェクト学習の進め方や、
グループワークのファシリテーションについて学び、
さまざまな実践的スキルを身につけることができます。

ひとりでも多くの教育関係者の方に参加していただき、
日々の授業運営や教育活動の参考にしていただけたら幸いです。

日程は下記の通りです。

日時:●平成24年10月20日(土) 13:00~17:00
●平成24年12月 8日(土) 13:00~17:00
会場:いずれも連合会館(旧総評会館) 会議室
http://rengokaikan.jp/access/index.html
(東京都千代田区神田駿河台3-2-11)

参加ご希望の方は下記URLにて必要事項をご記入の上、
お申し込み下さい。
http://www.eduq.jp/event/index.html

なお、場合によっては場所を変更する可能性がありますので
あらかじめご了承ください。

(3)「ミッションミーティングWEST」を京都で開催しました

去る9月15日(土)、京都市立西京高校において
「ミッションミーティング2012WEST」を開催しました。

当日は「クエストエデュケーション・企業探究プログラム」
に取り組む西日本の中学2年生から高校3年生まで、
7校から180名の生徒たちが集まりました。

企業の方々には、与えられた課題(ミッション)の裏に隠された
創業者や企業の“思い”を熱く語ってもらいましたが、
その言葉を受けた生徒たちからも積極的な質問が飛び交い、
生徒と企業人ともに刺激を受けた一日となりました。

◆当日の様子はこちらから
http://eduq.jp/news/archives/3883

(4)匠塾「自己探求の旅」研修を実施しました

去る9月7日(金)と11日(月)、日本フィランソロピー協会による
匠塾「自己探求の旅」研修が行われました。

このプログラムは、これまで社会の第一線で活躍されてきた
企業退職者やシニア層の方々を対象に、自らのスキルを役立て
社会貢献活動を始めるきっかけを作ることを目的としています。

半年にも及ぶさまざまな活動の導入授業として、
これまでの人生を振り返り、自らの価値観を形成する過程を
自分史として執筆し、参加者全員で共有しました。

◆当日の様子はこちらから
http://eduq.jp/news/archives/3907

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2.クエスト実践事例紹介 [千葉商科大学付属高等学校(千葉)]
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このコーナーでは、「クエストエデュケーションプログラム」
を導入している学校の授業での様子や、
ご担当の先生のインタビューを紹介します。

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今回訪問した千葉商科大学付属高等学校は
千葉県市川市にある共学の高校です。
クエストの授業は高校1年の総合学習の時間を使っており、
通常授業を終えた7時間目に行なっています。

同校では各クラスの担任が指導にあたっていますが、
インタビューに答えてくれた特進コース担任の長嶋先生は
前任校を合わせると8年以上もクエストに関わっているベテラン。
授業の随所に、きめ細やかな下準備がなされていました。

例えば、日本経済新聞社のミッションに取り組むチームには
大事なポイントに付箋やマーカーでラインを引いた新聞や
企画に役立ちそうな本をさり気なく手渡していたり、
ほかの企業に取り組んでいるチームにも、
先生が毎朝欠かさず読んでいる新聞数紙の中から
ミッションに関係のありそうな記事をすべて切り抜き、
毎回の授業で渡しているそうです。
また特に驚いたのは、長嶋先生お手製の
「ミッションを探求するための、色々な問いが書かれた模造紙」
でした。

企画を固める上でポイントになりそうな「問い」はどれも的確で、
そこに生徒たちがアイディアを書き込んでいくことで
自然と企画案が見えてくる形になっていました。

長嶋先生自身が、このプログラムをいかに効果的に活用できるか
探求し続けているからこそ、生徒たちが楽しく、知的好奇心を
膨らませながら学ぶことができているのだと感じました。

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先生インタビュー【千葉商科大学付属高等学校 長嶋茂雄先生】

Q.本日授業を見学してみて、授業の下準備が素晴らしいな
と感じたのですが、毎回あのようなことをされているのですか?

A.そうですね。彼らは特進コースなので月曜から勉強や部活、
そして塾のスケジュールでめいっぱい埋まっており、
とにかく時間がありません。

だから、あの模造紙の下準備も50分という限られた授業の中で
何とか形を残すための苦肉の策として始めたことなんです。

本来ならば、問いも含めて自ら考えながら書くべきなのでしょうが、
書くだけで1時間潰すことになってしまうのはもったいない。
そこはショートカットしてもよいだろう、という判断でやっています。
新聞の切り抜きも、私自身が毎朝新聞を読むのが
習慣になっているので彼らにそれを渡すのは
いたって自然に続けているだけです。

下準備とはちょっと話が逸れますが、
企画案を立てるのに本当はもっと効果的なやり方があって、
それは作った模造紙を教室の廊下に貼り出しておくことなんです。

今年は掲示物が多く、どうしても貼ることができず断念しましたが
つねに教室の壁に貼ってあったら、ちょっとした休み時間に
廊下で立ち話をしながら思いついたことを書き込めるんですよね。
ほかのチームのミッションにまで口を挟んだりするから、
「もしかしたら、このミッションとあのミッションは
つながってるんじゃない?」とか、そんな発見もあったりして
考えに制限がかからず広がっていきます。
互いが意見を交わすことで、思いもよらぬアイディアが
浮かぶこともありましたね。

Q.これまで8年以上もクエストの授業を続けていますが、
その中でどんなことが印象に残っていますか?

A.過去教えてきた中で、特に印象に残っているのが
校内発表会一週間前に企画をゼロからすべて作り直した
チームですね。彼らは前年の先輩たちが企業賞までしか
届かなかったので、何としてでもグランプリを獲るんだ、
という思いで頑張っていました。
でも、自分たちの企画が「いい線までいっても企業賞止まりだろう」
と気づいた瞬間、〆切が近づいているにも関わらず
覆してきたんです。

そこからの一週間は凄まじかった。
ひとりの生徒の家に泊まり込みで準備していました。
さらにそのあとがドラマチックで、彼らは結局全国大会で
準グランプリまでしかいけませんでしたが、
そのチームのメンバーだった勉強嫌いの生徒が
全国大会をきっかけに勉強をするようになって、
AO入試で成城大学社会イノベーション学部に合格しました。
これには私も驚きましたね。

ほかにも全国大会に出場した連中は早稲田や、千葉大学、
学習院といった大学に合格し、高い実績を残してくれています。
元々勉強は出来る子たちでしたが
全国大会に出場したことをきっかけに、深い部分で
勉強に対する意識が変わっていったように感じています。

さらにクエストで経験したことは
就職にも影響を与えているようです。
今年、大学3年生となった教え子は高校時代に
大和ハウスのミッションに取り組んだのですが、
そのことがきっかけで街並みをデザインする仕事に
携わりたいと考えるようになり、現在、某大手不動産会社を
目指して就職活動を始めています。

こういった歴代の先輩たちのエピソードを挙げれば
キリがありませんが、クエストの授業は生徒たちにとって
大きな人生の転機を作っていると感じています。

今年の授業で印象に残っているのは、何人かの生徒が
クエストの授業が終わったとき何気なく発した
「はぁ~、面白かった!」の一言ですね(笑)。

彼らは毎日、0時間目から授業を受けていて、
7時間目の授業は心身ともにヘトヘトになっているはずなのに
クエストの授業になると本当に生き生きとした表情をしていて、
普段と全然違うんです。「こんなこと、今までなかったよね」って。
私も最後の力を振り絞って教壇に立っているわけですが、
その一言ですべて救われます。

Q.先生にとって、このクエストの授業の一番の醍醐味は
何ですか?

A.やはり社会との接点ができるところです。
現代社会のような教科だったらできるかもしれないけれど、
それは知識として入れるものであって、自分たちでクリエイティブに
新しいものを創り出していって、それが社会の接点になる授業は
めったにないんじゃないかと思います。
しかもこれが正解というのがないでしょ?

単に課題が出て、その答えを図書館やインターネットで調べて
発表するとか、そういうのとは全く違うじゃないですか。
はなから答えがなくて、どういう結末になるかも分かってなくて、
先生も答えを持っていない。
その中で自分の創造性を育みながら、革新的なものを出してくる。
これってすごいことです。

生徒たちが社会との接点を感じている例でいうと、
このプログラムの中で街頭アンケートをするステップがあります。
当然、アンケートに答えてもらえず辛い思いもするわけですが、
生徒たちにとって、まさにその経験こそが社会とつながる意識を
芽生えさせるきっかけになっています。

街で出会った大人から「あんたたち、面白いことやってるのね!」
と励ましの言葉を掛けられアンケートに協力してもらったり、
社会の優しさに触れていく中で、自分たちの取り組みを
客観的に見られるようになるんですよね。
「自分たちはよいことをやっているんだ」という意識が芽生え、
それが社会との接点をつくるきっかけになっていると感じています。

Q.最後に、今後クエストの授業で取り入れていきたいことは
ありますか?

A.前任校で実際にやってみて、大きな実績を出していた
1・2年合同チームで授業をすることです。
異学年ミックスでチームを作ると、2年生が既に経験しているので
どういう風に進めていけばよいかわかるじゃないですか。
それを1年生が見て育っていく。
その繰り返しで、どんどんノウハウが凝縮されていくんですよ。

その結果、前任校では3チーム全国大会に出場して、
2チームが企業賞を取りましたからね。
しかも、そのうち1チームは準グランプリを取った。
それは完全にノウハウが伝播していった結果なので
是非、もう一度挑戦したいと思っています。

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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む現場の教師が、
生徒と共に日々奮闘する姿をエッセイ風に書き綴っていきます。

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9月21日「企画案を立てる」

授業もいよいよ中盤を迎え、各チームの企画案が出揃った。
今年は5チームが全国大会へエントリーする。

クレディセゾンチームは「静かに熟考する」3人組。
1人は周りの力を借りずに自己解決するタイプ、
残りの2人は大勢の中で気後れして、埋もれてしまうタイプだ。

そんな彼女たちの話し合いは独特で、リーダーの彼女が
気後れしてしまうタイプの2人の言葉を拾うようにして、
考えを共有していた。
そのやり方が功を奏し、昨年の授業では
ほとんど口を開く姿を見かけなかったその2人が、
ためらうことなく自分の思っていることを話すようになった。
ゆっくりだが、確実に前に進んでいるチームである。

日本経済新聞社チームは「和を大事にする」3人組。
普段から自分の主張よりも相手の話を理解しようとする
彼女たちの話し合いは、互いの意見を尊重し合い
穏やかに進められていた。

発表も息の合ったチームワークを見せており、
3人が信頼し合っているのがうかがえる。
ただ、その反面、真面目過ぎて突き抜けたアイディアが出にくく、
枠からはみ出せないのが弱みだ。

コカ・コーラチームは2チーム。
「物怖じしないで発言できる」6人組と「個性の異なる」
4人組のふたつだ。

6人チームは、まるで井戸端会議のように
全員が何でも言葉に出す勢いのよさが最大の強みである。
誰かがサラリと発した言葉にも、ちゃんと突っ込みを入れて
話を広げていく様子は見ていて気持ちいい。
ただ、脱線し出すと止まらないので、
軌道修正役を務める生徒の存在が大きな鍵を握っている。

4人チームは全員が、見事にキャラクターが被っていないのが
強みでもあり、弱みでもある。
美的感覚が優れていて、細かい作業が得意な子、
本質を見抜く力が優れている子、地味な仕事でも真面目に
取り組む子、そして全員のバランスを取れる子。
うまくかみ合うようになれば最強のチームになりそうだが、
今のところ互いが遠慮し合って、どこかギクシャクしている。
その結果、企画案も一番まとまりきれない状況だ。

チームの個性はそれぞれだが、そんな彼女たちの話し合いと
発表の様子を見ていて、新しいアイディアをみつけることに成功した
チームには3つの要素が兼ね備えられていることに気づいた。

その3つとは「ノリのよさ」、「話し合い自体を楽しむ」、
そして「本来の目的を見失わない人がいる」ことだ。

テーブルマークチームの4人組が、まさにこれを体現していた。
実際に話していることといえば、その8割がとるに足らない
雑談レベルだが、全員が肩の力を抜いて
思いついたことを自由に発言し合える雰囲気が、
どこよりも優れていた。
まさにブレストそのものを楽しんでいるのだ。
そして、そんな中でも話し合いの軸を見失わず、
舵を切る生徒がしっかり2人いることもほかのチームと
大きく異なっていた。

それぞれのチームの強みと弱みがはっきり見えてきた。
ここからは、さらにアイディアを発散させていくことと、
そのアイディアを意味のある10分間のプレゼンテーションに
まとめていく収束作業の繰り返しとなる。
自分がどんな部分で力を発揮できるかしっかり認識し、
責任を持って役割を全うする姿を授業の中で
実現しなければならない。

話し合いは右脳を使うのに対し、収束作業は
限りなく左脳で詰めていかなければならない。
その収束作業は、このクラスのほぼ全員が苦手だ。
そこをどう高めていくか、この力を養うことも
クエストの醍醐味のひとつである。

できないことは山ほど目についてしまいがちだが、
楽しさを感じた瞬間の彼女たちの進歩の速さは
限りない可能性を感じさせてくれる。
ここから校内発表会に向けて、私と生徒との
本格的な2人3脚が始まる。



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