2012年06月08日
こんにちは。教育と探求社の宮地です。
先日、ドイツやオランダで実践されている個別教育
「イエナプラン」のワークショップに参加してきました。
http://goo.gl/nyX0i
イエナプランは、学校を子どもと先生と親でつくる
ひとつの共同体と見なし、対話や催しなどの
実践を大切にしながら生徒一人ひとりの個性を伸ばす
教育活動です。
異年齢によるグループでクラスが編成され、
障害児の受け入れも積極的に行います。
このイエナプランの中核となるのが
「ワールドオリエンテーション」という活動。
教科の枠を超えた学習テーマにチームで
じっくりと時間をかけて取り組みます。
たとえば、「北極に行こう」というテーマを決めたら、
今いるこの場所から本当に北極旅行に行くには
どのような準備が必要か、よく考えて計画を立て、
実際に学校の体育館を北極に見立てて
キャンプまでやる、というもの。
ストーリーに沿って本気で取り組むことで、
学びは深く豊かになります。
この日のワークショップでは、ある一人の少年と
鳥のストーリーに沿ってチームで物づくりに取り組んだり、
さまざまなシチュエーションに沿って話し合ったりしながら
自らの内側にある答えを見つけていく「学び合い」
を体験しました。
写真は私たちのチームが作成した「少年の部屋」です。
http://goo.gl/7ddQu
「みんな違って、みんないい!」
「ストーリーで学ぶ」
「主体的市民を育てる」
その結果「新しい社会をつくる」
すべての点において深く納得、共感できるものでした。
教育と探求社は今後、このような本質的な教育の
取り組みをされているみなさんとの連携を
さらに深めていきたいと思っています。
教育と探求社
宮地勘司
—-【目 次】 ————————————————–
1.教育と探求社からのお知らせ
2.クエスト実践事例紹介 [渋谷教育学園渋谷中学校]
3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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1.教育と探求社からのお知らせ
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(1)第一回CAミーティングが開催されました。
去る6月11日(月)、廃校をリニューアルした
3331アーツ千代田にて「第一回CAミーティング」
が行われました。
このミーティングは「クエストエデュケーションプログラム
コーポレートアクセス(企業探究)コース」に協賛する
企業の方々が、これから一年間、生徒たちとともに
学びあうために相互に交流しながら、クエストに対する
理解を深めていくことを目的にしています。
当日はクレディセゾン、スカパーJSAT、大和ハウス、
テーブルマーク、日本経済新聞社、日本コカ・コーラの
各社のみなさんがそれぞれの企業の枠を超えた
混成チームを結成し、ミッションに取り組みました。
普段こんな風に話をすることの少ない企業の方々が
同じテーブルを囲み、一つのプレゼンテーションを
作り上げる姿は非常に刺激的で、大いに盛り上がった
一日となりました。
◆当日の様子はこちらから ⇒ http://goo.gl/Du5EV
(2)日本経済新聞社の教育情報誌「ducare(デュケレ)」に
クエストカップ2012全国大会の模様が掲載されます。
本日6月18日(月)発売号に、クエストカップ2012の
当日の様子が詳しくレポートされていますので、
ご興味のある方は是非お近くの書店でお手に取って
ご覧ください。
(3)「クエストエデュケーションプログラム」体験会のご案内
“生徒が輝く探求型教育”をコンセプトにした
「クエストエデュケーションプログラム」の体験会を
下記の日程で実施いたします。
体験会では、本プログラムの概要をわかりやすく
説明するとともに、そのエッセンスを実際に先生方にも
体験していただきます。
日々の授業運営のヒントや
教育活動の参考にしていただけたらと思っています。
日時: ○平成24年 7月14日(土) 13:00~17:00
○平成24年 8月 9日(木) 13:00~17:00
○平成24年10月20日(土) 13:00~17:00
○平成24年12月 8日(土) 13:00~17:00
会場: 連合会館(旧総評会館) 会議室
http://rengokaikan.jp/access/index.html
(東京都千代田区神田駿河台3-2-11)
参加ご希望の方は、下記メールアドレスまで○ご参加日程
○御校名○お名前○電話番号○メールアドレス○ご担当教科
○当日連絡先をご記入の上、お申し込みください。
info@eduq.jp
なお、場合によっては場所の変更がある
可能性がありますので、あらかじめご了承ください。
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2.クエスト実践事例紹介 [渋谷教育学園渋谷中学校]
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このコーナーでは、「クエストエデュケーションプログラム」
を導入している学校の授業での様子や、
ご担当の先生のインタビューを紹介します。
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4月から3回にわたって、クエストカップ2012全国大会の
グランプリ校をインタビューしてきましたが、最後を飾るのは
「企業プレゼンテーション」部門のグランプリに輝いた
渋谷教育学園渋谷中学校です。
同校は「自調自考」の教育理念のもと、
多くの行事があることが特徴の一つです。
中でも中3ではオーストラリア研修や模擬裁判、
英語スピーチコンテスト、国語ディベートコンテストなど
さまざまな行事に取り組むことで、生徒の可能性を広げ、
成長する機会を作っています。
その中でコーポレートアクセスコースは、普段の学習活動と
実社会との結びつきを生徒が強く実感でき、
その後の学習意欲UPにつながっているようです。
今年で導入8年目となりますが、授業時間以外にも
昼休みや放課後を利用してミーティングをしたり、
インターン先企業にネットなどを通じて積極的に質問する
チームなど先生が何もいわなくても、自ら熱心に
取り組んでいるそうです。
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先生インタビュー
【渋谷教育学園渋谷中学校 山口 貴峰先生】
Q.「企業プレゼンテーション」部門において
グランプリを受賞しましたが、生徒たち、先生方は
どのように感じていますか。
A.もちろん、とても喜んでいます。
そしてそれは生徒も教員も、学年全員が
一つのチームであるという意識が生んだ結果だと
受け止めています。
受賞チームの熱い話し合いや
陰の努力から生まれたアイデアも素晴らしかったのですが
単にそのチームだけの頑張りでなく
学年全員の頑張りが生んだ結果なんだという認識を
共有できたので、全員で受賞を喜ぶことができました。
今回はグランプリという最高の結果を
得ることができましたが、これは学年全体に
勢いがなければ成しえなかったと思います。
生徒たちは予選通過の段階から
既に盛り上がっていました。
全国大会出場の一報をいただいて
クラスに報告に行った際、教室の温度が
一気に高くなったような感がありました(笑)。
該当チームはもちろん歓びの悲鳴をあげていましたが、
そのチームに「全国取って来いよ」と声をかけてくれる者や
選ばれずに悔しがっている者がいて、
いろんな熱い気持ちが吹き上がっていたのが
印象に残っています。
また、全国大会には進出したものの受賞を逃した
2チームについては、私たちの予想以上に
悔しがっていましたね。
Q.御校では、今年3チームが全国大会へ出場しましたが、
当然予選を通過できなかったチームもいます。
そういった生徒たちも含め全国大会という目標には
どのような意義があったと感じていますか。
A.3チームが全国大会に出場させていただいたから
いえることですが、出場できなかったチームも
自分たちのやっていることが全国で高い位置にあることを
リアルに実感できているようでした。
私たちの学校では、中間発表や校内最終発表で
全チームが発表を行います。
決してひいき目ではなく、どの班も面白い工夫がされていて
感心させられるものばかりでした。
視点が変われば、どの班が選ばれても
おかしくない出来だったと思います。
これは生徒たちも同じ印象を持っています。
少しの差が受賞か否かの差になっていることに気づき、
学校生活のさまざまな場面でのモチベーションアップに
つながっているように感じています。
Q.年々生徒たちの力がついてきていますが、
授業をする際、どのようなところに意識を向けて
工夫されているのでしょうか。
A.本校の中学3年生は、さまざまな行事に取り組む
多忙な学年ですが、すべての行事を通して
「自調自考」の力を養うことを意識しています。
生徒が考えていることに対して教員が
教えてしまわないこと、口を出してしまわないことを
特に心がけています。
Q.クエストの授業を行う中で、一番苦労するところは
どこですか?また、どのようにしてそこを乗り越えさせて
いますか?
A.やはり導入準備ですね。
このプログラムで用意されたカリキュラムを
本校のシラバスのどこに取り込めば
高い効果が得られるか、いろいろ悩みました。
ただ、生徒は強い興味さえ持ってくれれば、
どんな難関もたくましく乗り越えていってくれますので、
授業が始まってしまえば私たちがやることは
ほとんどないように感じます。
Q.最後に、先生にとってクエストを続けてきてよかった
と思うことを教えてください。
A.今まで体験できなかった企業からのミッションを受け、
実際に企業の方からお言葉をいただけたりするので
実社会をとても身近に考えられるようになりました。
これは、普段の学習活動に対する意識の向上に
つながっています。
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3.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む
現場の教師が、生徒と共に日々奮闘する姿を
エッセイ風に書き綴っていきます。
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5月25日「チームワークを育むために必要なこと」
前回の授業で自分たちがインターンする企業が決まり、
無事チームを作ることができた。
これから長い道のりを経て、
生徒たちはどのような成長を遂げるのだろうか。
今の段階では、どのチームもアンバランスな編成で
不安要素のほうが遥かに大きい。
極端に人数の少ないチーム、
コミュニケーションを取るのが苦手なチーム、
リーダーシップを取る生徒がいないチーム。
企業から与えられたミッションに対する
自分たちなりの答えを導く過程で
チームワークを育てていかなければならない。
そんな彼女たちに考えさせるきっかけを作ろうと思い、
TEDの“ある映像”を見せることにした。
http://goo.gl/3xvYd
たった3分間で「社会をいかにして動かすか」について
明確に示したこの映像を見せようと思った理由は
二つあった。
一つは、チームリーダーがリーダーシップを
発揮することよりも、一人のメンバー(フォロワー)が
リーダーについて行く勇気を持ち、リーダーが発した一言に
乗っかり波を作ること。
そして、リーダーはその波を作った最初のメンバーを
対等に扱う大切さに気づいて欲しかったからだった。
昨年の授業で一番問題だったのは、チームリーダーが
背負う責任があまりにも大きかったことだ。
話し合い一つ取ってみても、舵取りは
すべてリーダーに任され、停滞すると
リーダーが一人で抱え込んで苦しんでいた。
そのほかのメンバーも当然苦しんでいたが、
「どうせリーダーが仕切ってくれるだろう」
という空気が流れる場面を何度も目にしてきた。
そんな考えを覆したくて、チームワークを育むためには
何が必要なのか、この映像を通じて考えさせようと思った。
そしてもう一つは、限られた時間内で
自分たちなりの結論を導き、それを人に伝えることの
難しさとすばらしさを感じさせること。
生徒たちに見せた、このプレゼンテーションが
どれほど綿密に考え抜かれ作られているものか、
人の心を動かすプレゼンテーションとは
一体どういうものか、彼女たちに実際に見て
感じてもらおうと考えたのだ。
3分間の映像を彼女たちは食い入るように見つめていた。
その姿から彼女たちの気持ちにスイッチを
入れることができたと確信した。
映像を観終わると、彼女たちに今日のゴールを提示した。
「自分たちがインターンする企業が
何故このミッションを出したのか?
その背景を調べ、自分たちなりの考えを
3分間で発表する」というものだ。
限られた時間内で、自分たちがインターンする企業と
どれだけ真剣に向き合い、一つの結論を導き出せるか。
人に伝えるということがいかに難しいことなのか。
この二つを感じてもらうことができたら
今日の授業は成功だ。
彼女たちは配布された資料を眺めながら、
誰からとなく自然な流れで話し合いを始めた。
昨年度の授業では考えられない光景である。
時間はあっという間に過ぎ、発表の時間となった。
張り詰めた空気の中で、全チームが滞りなく発表を終えた。
授業を終えてから、いつものように感想を書かせてみると
さまざまな気づきを得たことがわかった。
リーダーである自分の発した一言に
責任の重さを感じた生徒。
頭で描いたものを言葉にして伝える難しさを感じ、
先ほど観たプレゼンテーションとは程遠い発表をした
自分の力のなさに打ちのめされた生徒。
他のチームの発表を見たことによって、
自分の発表を客観視することができた生徒もいた。
小難しいことをつらつらと並べても、心に響かないこと。
かといって、自分がした発表のようにどんなに熱弁しても
聴衆に伝わるとは限らないということを肌で感じ、
空回りしてしまったことを綴っていた。
その彼女は、さらにこんな感想も残していた。
「とにかく緊張した。自分が置かれている状況を
楽しむことが出来なかったのは非常に残念だったが、
それが出来るようになったとき、きっとチームや
自分の心構え、企画に対して何かしらの楽しさや嬉しさ、
誇りを持てるようになるのではないかと思う。
そのことを想像するとワクワクします」
実際に見て、感じたことをすぐに実践してみることは
うまくいかなければいかないほど、強烈な体験として残る。
自分たちに何が足りないのか、
それぞれが感じることができた。
しかし、成長のために必要なことは今出来ていない
たくさんのことをあげつらうのではなく、
自分たちの強みをしっかり把握できるようになることだと思う。
彼女たちはつい自分が出来ていないことばかりに
目がいってしまい、すでに持っている強みを知らない。
それが最大の弱点だ。
その壁を乗り越えるためには、彼女たち自身が
チームメンバーそれぞれの強みを互いに発見し、
認め合うこと。
それぞれが適材適所で力を発揮できるような関係を
築いていくことである。
導いてくのは私ではなく、彼女たちでなければならない。
チームとして必要なことは何か。
一年後、彼女たちはどんな結論を導き出し
私に見せてくれるのだろうか。