2012年05月25日

「教育と探求」Vol.10 2012/5/25 ”教育と探求社 創業8周年”

こんにちは。
教育と探求社の宮地です。

今月はじめに、本社を秋葉原から千代田区の四番町へ移転しました。

数年前まで日本テレビの本社があったあたりで、
おいしそうな食べ物屋さんや古くからあるお店が軒を連ねるエリアです。
また、クエストカップの会場となる法政大学をはじめ、
中央大学、上智大学、女子学院やグロービス経営大学院など
多くの教育機関が徒歩数分の圏内にある、まさに文京エリアでもあります。

土地は、そこに暮らし、働く人々の意識を映し出すもので、
それぞれの街にはそれぞれの色があります。
私がこの土地から感じるのは、凛とした清々しい秩序です。

今年で創業8周年を迎える教育と探求社は、
この土地から、社会に新たなる息吹を送り続けたいと思います。

5月18日の金曜日、新オフィスで「Open Office day」開催しました。
先生方やいろいろな企業・団体のみなさまなど、
とてもたくさんの方にお越し頂き、お祝いをしていただきました。

当日の様子はこちらから→ http://eduq.jp/news/

市ヶ谷、麹町界隈にお越しの際には是非、お気軽に
足をお運びください。

狭いオフィスではありますが、新たなる時代へのシフトを支える人々が
集う場所になればと思っております。

東京都千代田区四番町4-9
東越伯鷹ビル
6F
TEL:03-6674-1234

これからも、教育と探求社をどうぞよろしくお願いいたします。

教育と探求社
宮地勘司

—-【目次】————————————————–

1.クエスト実践事例紹介 [滝川第二中学校(兵庫)]
2.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~

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1.クエスト実践事例紹介 [滝川第二中学校(兵庫)]
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このコーナーでは「クエストエデュケーションプログラム」を導入している
学校の授業での様子や、ご担当の先生のインタビューを紹介します。

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クエストカップ2012のグランプリ受賞校インタビュー。
第2弾となる今回は、「人物ドキュメンタリー」部門のグランプリに輝いた
滝川第二中学校の北岡浩先生にお話をうかがいました。

同校では、生徒一人ひとりの個性をしっかり見極め、
勉強だけでなく統合的にバランスの取れた人材を育成することを目的に
毎週水曜日にさまざまな体験学習を行う『スペシャルウェンズデイ』を
実践してきました。

その目玉として取り組んでいるのがクエストエデュケーションプログラム。
開校当初から導入し、今年で8年目を迎えます。
中学2年で進路探究コース、中学3年で企業探究コースと
生徒たちは、2年連続してクエストに取り組んでおり、
毎年12月には全校で発表会を実施しています。
次の学年で自分たちが行うことを実際に見てからスタートしますので、
生徒たちは4月最初の授業をとても楽しみにしています。

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先生インタビュー 【滝川第二中学校 北岡 浩先生】

Q.今回「人物ドキュメンタリー」部門においてグランプリ受賞しましたが、
生徒たちや校内の反応はいかがでしたか?

A.本校は高校の部活動が全国的に有名で、県大会優勝は
当たり前のクラブが多いのですが、中高一貫コースからは
これらの部活動に所属することができません。

そのため、自分たちも全国の舞台に立って優勝したいという想いは
強かったと思います。グランプリを受賞したことによって、
自分たちも「やればできる」と自信がついたように感じます。

また、文武両道を目指す学校ということもあり、部活動以外の分野で
全国大会グランプリを獲得したことは、職員・保護者にとっても
よい刺激になったようです。

今後、ますます「文」の分野でも活躍できる学校に成長できれば
と思っています。

Q.御校での授業はどのように行われているのでしょうか?
何かエピソードがあれば教えてください。

A.本校の授業の雰囲気がわかるエピソードというと、
やはり授業開始時のワークブック(教科書)配布ですね。

表紙が40種類あるワークブックを、まず裏向けにして
生徒たちに配布します。
そして、「Are you ready?」の私の掛け声でスタート。
生徒たちはキョトンとした表情をします。

そこで、すかさず「乗りの悪いヤツはダメだ!もう1回、Are you ready?」
と声を掛けると、今度は乗りよく「Yeah!!」と返してくれます。

生徒たちのテンションを一気に盛り上げたところで「3,2,1,Open!」で
一斉に表紙を裏返すと、大変な盛り上がりになるわけです。
廊下を通っている先生たちからは「どんな授業をしているんだ?」
と思われるかもしれませんが、それでいいのです。

スタートからこんな調子なので、授業中はとにかく賑やかです。
プログラムが進むにつれて、みんなの仲が深まり、どのチームにも
輪から外れている生徒はいません。
おとなしい生徒も積極的に発言しています。

Q.今年で8年目となるわけですが、授業をする際
どのようなことを心がけていらっしゃいますか?

A.常に心がけていることは、生徒たちを子ども扱いしないことです。
生徒たちは「やればできる」のです。
だから少しサボっているように見えても、叱ることなく見守っています。

もちろん注意することはありますが、それは最低限のルールが
守れなかったり、マナーが悪かったりしたときだけ。
でも、そのさじ加減は難しいですね。
毎年反省して、次年度の改善につなげています。

振り返ってみると、1年目に取り組んだときは、パワーポイントを使って
プレゼンテーションができればいいと思っていたのが、
今では全国大会のグランプリにとどまらず、生徒たちの提案が
実際に世の中に活かされたらいいな、とまで思うほどに変化しています。

Q.先生が授業運営をされるとき、難しいと感じるのは
どんなところですか?

A.長く続けているからこその難しさですが、毎年決まった形で
運営することができない、というところです。

先輩たちの取り組みを見て、年々、学年全体のレベルが
上がってきているので、現状で満足せず
常に変化を求めていく必要があるわけです。

準備にはそれなりの時間がかかるので大変ですが、
それがこの授業を運営する面白さでもあります。

私自身が楽しんで運営すると、生徒たちは積極的に
取り組んでくれます。

この「一緒に楽しむ」ことが、生徒たちにさまざまな問題を
乗り越えさせるポイントになっているのだと思います。

Q.最後に、先生にとってクエストを続けてきてよかったと思うことを
教えてください。

A.まず、生徒たちの自発性が向上しました。
高校生になると、公立中学から受験して入学してくる生徒数の方が
多くなりますが、その中で、中高一貫生の活躍が目立っています。

生徒会活動に対して積極的に取り組み、さまざまなアイデアを出したり、
滝二祭(文化祭)のダンスで団結した創作ダンスを披露したり、
本校に新しい風を吹き込んでくれました。

恥ずかしがることなく、何事にも真剣に取り組む積極的な姿勢が
学校全体を、より活性化してくれているように感じています。

また、進学実績も飛躍的に伸びています。
クエストに取り組んだことで、進路を真剣に考え、
目的意識を持って受験勉強をしています。
卒業生の多くが、このプログラムに取り組んでよかった
といってくれます。

1期生はまだ大学在学中ですが、卒業して実際に社会へ出たときに
このプログラムを振り返ってもらい、その感想を聞かせてほしいですね。

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2.QUEST DAYS~ある学校の授業風景~
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このコーナーでは、ある高校でクエストに取り組む現場の教師が、
生徒と共に日々奮闘する姿をエッセイ風に書き綴っていきます。

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5月15日「たった一言に込められた意味」

生徒が発した一言の裏には
どれだけのメッセージが込められているのだろうか。

今年度1回目の授業を終え、そのことの重さを
考えさせられる出来事が起きた。

来週までにインターンする企業を決めなければならないため、
何人かの生徒たちが私のもとへ相談にやってきた。

他愛のない会話をしつつ、相談に乗っていると突然、
生徒たちが、さも当たり前であるかのように
「どうせ私はバカだから」
「考えるのが苦手だから、私は役に立てないと思う」
ということばを、サラリと口にした。

「そんなことないよ。○○なところとか素晴らしいじゃない?」

「そんなのきれいごとですよ」
一人の生徒が笑顔を浮かべながら、
でも、はっきりとした口調で答えた。

そのたった一言に、返すことばが見つからなかった。

厳密にいうと、彼女のことばの裏にある“なにか”を
まるで理解することなく答えてしまった自分のおろかさを
見透かされたようで、うろたえてしまいことばが出なかったのだ。

彼女たちの発したことばが頭の中をグルグル回り、
ことばの裏に隠された“なにか”が引っかかった。

家に帰ると、何人かの生徒たちからメールが届いていた。

授業で出した課題を早速、送ってくれたんだなと思いながら、
ひとりの生徒のメールを開いてみた。

「考えるのが苦手なので、グダグダのプレゼンになって
終わると思います」と話していたその生徒は、課題に添えて
こんなメッセージを残していた。

「自分の意見をいう大切さを学んだからこそ、
『この作品に携わった』と堂々といえるようになりたい」

今さっきまで冗談めいた口調で「自分は役に立てない」
と話していた彼女から届いたメールには、
この授業を再び選択したことに対する期待と不安、
そして強い決意が込められていることを感じた。

彼女のたった一言の裏に隠されていた本音を知り、
ハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

自分はいったい、この生徒の何を見ていたのだろうか。
さきほど話していたときには到底思い及ばぬことだった。

生まれたばかりの子どもは、ことばを話せないかわりに
全身を使って、気持ちを表現する。

しかし、成長するにつれて、いつしか本音と建て前を
使い分けるようになり、自分の本音は胸にしまってしまう。

生徒たちからもらったメールには、しまったはずの
さまざまな本音が行間からにじみ出ていた。

あらためて思い直してみると、あのときのたった一言から
この気持ちは想像できたかもしれない。

口から発せられる言葉には、いったいどれだけの
情報が込められているのだろうか。

彼女たちが発することばには、自信のなさという
フィルターがかけられていて、本当に伝えたいことばを
見えないようにしているのだろう。

でも、そのたった一言を発することで
私に“なにか”を伝えようしてくれている。

そのことに自分はしっかり気づけていただろうか。

彼女たちの大切なメッセージを拾い上げ、
背中を押すことができていただろうか。

中途半端な声掛けは、きっと生徒を失望させるだろう。

「ことばにとらわれて、本質を見失うな」
生徒たちのメールから、そんな目に見えない喝を
入れられたように感じた。



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