教育と探求社:QUEST DAYS

QUEST DAYS ~探求する生徒たち~

2011年9月11日
by admin

企画会議を開く

今日は後期一回目の授業、企業から出された課題(ミッション)
について、その答えを考えるための企画会議を開いた。

彼女達がインターンとして所属している企業はクレディセゾン、 
スカパーJSAT、大和ハウス、テーブルマーク、日本経済新聞社、
そして森永製菓の全6社。 

どの企業も一筋縄ではいかない深いミッションを提示している。
例えば、「日本の未来をここからつくる 人が集い、歓び、
つながる 100年続くまちづくり計画を提案せよ」といった具合で
その企業がまさに今、本気で考えているテーマを
そのまま子どもたちに問うているのである。

企画会議というと、ひたすら話し合いを重ねるイメージがあるが
この授業では「ブレインストーミング(通称ブレスト)」という
手法を使って企画案を練り上げていく。

まずは自分の所属する企業から出されたミッションを見て、
そこからひらめいた言葉や感じた言葉をひたすら付箋に
書き出す作業をする。

 

しばしの静寂の時間。思い思いの言葉を何枚もの付箋に
書き連ねていく姿は、何度見てもドキドキする。

続いて、各々が書き出した付箋を声に出してシェアしながら
机の上に並べていく。意味の近いもの同士を分類し、
それぞれの付箋の関係性を考えたりしながら
そこから自分たちの企画案を紡いでいくのだが
そこで急に流れが止まる。

生徒たちは、簡単に答えが見つからない問いに対して
すっかり途方に暮れてしまったようだった。 

付箋に書き出した言葉を口々にいいあっていたときの
イキイキとした姿とは一変して、互いが言葉を失い、
目の前に並んだたくさんの付箋を眺めながら
なんとも困惑した表情を浮かべている。 

方向性を示されない恐怖に支配された生徒の表情は
絶望的にすら見える。
それを見てしまうと、助け船を出したい、と無条件に思う
教師の本能的反応との葛藤。

これは日頃の授業や学校内での活動では、
殆ど見られない光景だ。
通常は、生徒が答えを見つけられないとき、
教師はゴールに向かう手順を与える。

少し自分で考えれば誰もがそれなりのゴールに近づけるように、
生徒の力量に合わせて適当な塩梅でゴールに至るまでの
手順を設定する。

そして、少しの工夫の余地を残すことによって生徒たちに
「達成感」という小さなご褒美を与えるのだ。 

ところが、この授業ではそんな妥協は一切許されない。
ひたすら生徒たちを問題と正面から向き合わせ、
考えさせるのだ。 

感じたことをそのまま言葉として吐き出してほしい。
心でそう願いながらも、いざ目の前で生徒が考え込んで
焦れば焦るほど無理にまとめようと必死になっている姿を見ると
何か言いたい衝動に駆られるのだ。
これも一種の職業病だとわかりながらも。 

ブレストの最大の肝は「感じたことをそのまま言葉にすること」
であると私は思う。

目にした言葉、他の人が発した何気ない言葉から感じたことを
どんな小さなことも拾い上げ、“恰好つけずにありのままの言葉で”発する
勇気こそが思いもよらぬ発想を生み出すきっかけになるのだと思う。

イメージとしては、幼子が母親に「なんで地球は丸いの?」と尋ねる
何気ない質問のようなものだ。 

人は本来、誰もがそんな何気ないことにも不思議を感じる
感覚を持っている。
しかし、目や耳から入る情報が蓄積され、様々な人と関わるうちに
少しずつ「心で感じたことを言葉にする」感覚を押さえつけられ
素直に感じる心をどこかに置き忘れていくのかもしれない。 

ブレストの理想的なイメージとして、もう一つ思い出すのが
放課後の生徒たちの何気ない会話だ。
気心の知れた仲間と、心の赴くままに延々と会話をする感覚。
話題があちこちに飛んで、とりとめのない話が
思わぬ方向に逸れていくとき心が最大限に開いて、
一切飾らない生の言葉が浮かんでくるものだ。
そんなときこそ、人は創造的な発想が出来るのではないかと
感じている。

これからどれだけの時間が掛かり、その結果、どんな場所に行きつくか
わからないけれど、恐れず、飾らず、「これってどういうことだろう?」という
幼子のような心を持って浮かぶ限りの言葉を吐き出してごらん。
仲間が発した言葉を心で感じて、思い巡らせてごらん。
そんな人にこそ、自らの奥底に眠っている「心の声」が天から降りてくるから。 

来週の更なるブレストに向けて彼女たちに、このことを実感してもらえるよう
授業冒頭部分でしっかりマインドセットできる仕掛けを考えよう。
彼女たちの本来持っている感覚を呼び起こすことが、来週の私に与えられた
ミッションである。

そのためには私自身も、彼女たちの一挙手一投足にも心を配り、
肌で感じて、自らの心の声を引き出さなければならない。  

そして、何よりもまずは生徒たちの底力を信じよう。
そう心に誓った一日となった。

 

2011年7月14日
by admin

前期授業を振り返る

今日は、前期授業の締めくくりとして作文の課題を出した。
目的は、生徒と私自身がそれぞれ授業の振り返りをすることだ。 

振り返ってみたら、今年度から始めた「クエスト」の授業は生徒にとっても
私自身にとっても、困難の連続だった。

ワークブックの内容に触発されて、つい色々な話に脱線してしまい
授業時間をオーバーするのは当たり前、チームでの発表準備では、
生徒たちが放課後遅くまで残って他の授業に支障をきたすこともあった。 

そこまで生徒たちが熱中することは嬉しい限りではあるが
その反面、他の先生方には相当迷惑を掛けてしまったのも事実だ。
授業運営という意味では、課題が山積みだ。

でも振り返りをしたかった一番の理由は、授業の中だけでは
生徒たちの本当の声を拾い切れていないのではないか、ということだった。 

生徒たちの感じたことは、一体どのような形で文章に表れるのだろうか。
そして、その声を自分は真摯に受け止めることができるだろうか。

期待と不安の中、いざ生徒たちの作文に目を通してみると、
予想以上の衝撃を受けた。 

何気ない日常の中にこそ、成長のエッセンスが隠されていることに
改めて気づかされた。

人は本気で何かを掴もうとするとき、挫折や悔しさをめいっぱい味わう。
そして、それを乗り越えようとすることで底力が生まれてくるのかもしれない。 

作文の中で、ひときわ目を引くものがあった。
それは、普段から何事においても積極的に取り組むことがなく
感情をあまり表に出さない生徒のものだった。

その生徒はクラスで唯一、インターンする企業を決めることができなかった。
「決められないから、どれでもいい。」というそっけない彼女の一言に
「それじゃあ、私が決めてもいい?」と、言葉の本当の意図を汲み取らずに
インターン先企業を決めてしまった。 

「決められない」本当の理由が作文の中に書いてあった。
彼女は、どの企業も魅力的で一つに絞れなかったということを
つたない文章で綴っていた。

6社のインターン受け入れ企業の動画を見ながら、彼女がどれほど胸躍らせ
期待でいっぱいの気持ちになっていたかを想像すると
浅はかな自分の思い込みに、とても恥ずかしい気持ちになった。 

街頭アンケートで駅前に調査しに行ったときの、彼女の姿も印象的だった。
彼女以外のメンバーが、見ず知らずの人に一生懸命声を掛けている中で
一人だけ壁にもたれて、じっと皆の様子を眺めていた。
彼女がただ単に、やる気がないのだと感じていたが、それも大間違いだった。

彼女は目の前にいる人にどのように声を掛けたらよいか混乱してしまい、
その場にいることが精一杯だったのだ。
そんな自分の不甲斐なさを、作文に切々としたためていた。 

同じようなことを書いていた生徒がもう一人いた。
その生徒は、先生に声を掛けることすらままならないくらいシャイな生徒だ。

彼女は誰とも群れをなさず、一人で街頭インタビューに挑戦していた。
でも肝心の一言が出てこず、見知らぬ人の後ろを
ひたすら追いかけることを繰り返していた。
結局、一時間余りの調査では誰にも声を掛けることができなかった。 

その生徒もまた、声を掛けることすら出来なかった自分に
心底悔しさをにじませていた。
そして、その日の帰り道、家の近所で勇気を振り絞って道行く人に
アンケートをお願いしたこと、たくさんの人が協力してくれて
人の優しさに触れて感動したことを綴っていた。

この作文を書かせなかったら、知らないうちに
生徒の乗り越えるハードルを下げて小さなステップの達成を
手放しで喜ぶ安易な自分の姿勢に、絶対に気付かなかっただろう。

思わぬ場面で味わう悔しさは、人をぎりぎりの状態に追い込み
自らの内なる心の声を感じ取るきっかけをつくるのだ。
そんな心の声に気づいたとき、初めてその壁を乗り越える
決意が生まれるのであり、そういった本能を誰もが生まれながらにして
備えているのだと思う。

生徒たちが、そんな心の声に気づいたとき教師として、
どんな後押しができるだろうか。
彼らの心の声を受け止める神経を、
もっと研ぎ澄まさなければならないことを感じさせてもらった一日となった。

2011年7月5日
by admin

アンケート調査結果を報告する

今日は、インターン先の企業から出された初仕事
「アンケート調査」の結果を校内で発表する日だ。           

今回の授業の目的は、インターン先企業が提供する
商品やサービスについて、世間の人がどのように感じ、
どんなニーズがあるのかをアンケート結果から正確に捉え、
分析し、発表することである。           

でも、その裏にあるもう一つの目的は、自分たちの足で
街の人々の声を集めることによって感じる
「社会との繋がり」を意識させること。
アンケートを断られたり、逆に励まされたりする中で
自分たちが社会と繋がっていることを、肌で感じられる貴重な体験だ。

この経験を経て、生徒はようやく企業の一員として、
真剣に問題に取り組むモチベーションをつかむのだと思う。           

果たして生徒たちはどんな気づきを得られたのか
私も五感を開いて、心を開いて、生徒の発表を受け止めたい。

プレゼンテーション1時間目は、発表前の最終調整として、
資料の修正や担当の割り振り、練習を行う時間にあてた。
まるで教師の存在など忘れたかのように
無心になって集中する生徒たちの姿の何と美しいことか!

特に印象的だったのが、大和ハウスチームの秘密特訓。
彼女たちは隣の空き教室に移動して、何度も何度も時間を計りながら
練習を繰り返し、発表を時間内に収めるように、そして思いを乗せて
話せるように、言葉をひとつひとつ自分たちの頭の中になじませていた。
人間が追い込まれた時に発揮する集中力の凄さに圧倒されつつ、
皆のプレゼンが成功することを心の中で祈った。           

2時間目、いよいよ本番。
審査員として、何名かの先生に入ってもらったことで
生徒たちも日頃とは違う雰囲気を感じ、
一気に緊張した面持ちに変化した。

   

今回の発表会は、全員が審査員となって相互に審査を行い、
ナンバー1のチームを決定する形式を取ることにした。
各チームのリーダーにクジを引いてもらい決まった発表の順番は、
①スカパーJSAT②クレディセゾン③森永製菓④大和ハウス
⑤日本経済新聞社⑥テーブルマークの順。制限時間は3~5分。           

結果は、どのチームもとてもがんばっていたが、
話したいことがありすぎて、情報がまとまりきれなかったという様子。
それもそのはずで、先週行った街頭でのアンケート調査のサンプルが
少ないところでも52枚、多いところでは何と180枚も取ってきていた。
たった1週間の中で生徒たちが集めたアンケート結果は、
たくさんのドラマが詰まった汗と涙の結晶だった。                    

特に圧巻だったのは、森永チームのメンバーが集めた
180枚の回答用紙。
授業時間内だけでは飽き足らず、放課後2日間連続で駅前を歩き回り、
180人もの方に協力してもらったという。
そんな彼女たちの集めた貴重なデータには、あまりにもたくさんの思いが
詰まり過ぎていて、まとめるのにもとても苦戦したようだった。
もう一時間あれば、後悔のないプレゼンをさせてあげられたよな…と、
教師として申し訳なく思った。

しかし、彼女たちの発表はまだまだ荒削りではあるけれど
今できる精一杯を伝えてくれた。物事に取り組むときは、
カタチも大事だけど、まずは思いを満たす事が大切であることを
教えてくれた。           

各チームの発表があまりに白熱して、6チームすべてが終わる頃には、
予定時間を30分もオーバーしていた。
すぐに全生徒と審査員による投票が行われ、
栄えある1位に輝いたのは、「クレディセゾン」と「大和ハウス」の両チーム。
同点優勝となった。

この2チームに共通して素晴らしかったところは、
①時間内で簡潔に自分たちの考察や提案を盛り込めたこと
②自分たちのオリジナルの言葉で、思いを乗せて発表できたこと
その結果、聴衆の心に残り、多くの審査員に支持されたのだと思う。

授業後、ひとりの生徒が私にこんな言葉を残してくれた。
「他のチームの発表を見ることで、自分一人では気づけない
たくさんのことが学べた。この気づきを、必ず後半のミッションを
取り組む際に役立てたい。」と、力強く語ってくれた。           

教師が何も言わなくても、自分たちで互いに学び合う姿勢、
彼女たちの計りしれない底力に、ワクワクした一日となった。

2011年6月30日
by admin

アンケート調査を実施する

今日は、インターン先の企業から出された初仕事
「アンケート調査」を、街に出て、実施する日だ。

今回与えられた仕事の目的は、自分たちが所属する
企業に対する世間のニーズを肌で感じることである。
ここで得られた街の声が、後半の企業から受け取る
ミッションの答えのヒントや土台となるわけだ。

アンケート調査実施にあたっては、極力アドバイスを控えた。
その理由は、ギリギリの状況に追い込んで本気で考えさせたかったからだ。

アンケート調査は、アルバイトなどでもやることがあるが、
決して楽な仕事とはいえない。
経験したことがある人もいると思うが、道行く人々は
そう簡単には足を止めて協力してくれないものだ。

生徒たちは世間の冷たさを、めいっぱい感じることだろう。
しかし、だからこそ彼女たちは限られた時間の中で必死に考え、
昨日まで考えたこともないようなアクションを起こせるのだと思う。

アルバイトもしたことがないような生徒たちが、
一体どんな奮闘をするだろうか。

授業開始前、改めて責任者の先生へ
アンケート調査で外に出る旨を伝えると、
「生徒たちは、知らない人に声を掛けるのが怖いみたいで、
昨日までの段階で身内や近所の人に、アンケートを結構取っているらしいよ」
という言葉が返ってきた。

もしかしたら、教室に残ってアンケートを取りに行かないという
最悪の事態もあり得るかもしれない。
そんな不安を抱きながら、駆け足で教室へと向かった。

教室に入ると、いつもと様子が違うことに気付いた。
慌ただしくアンケート準備をする生徒たちの姿が
なんとなく張り切って、浮き足立っているように見えた。

 生徒達には、最低限のルール
① 名刺の入ったプレートを首から下げること
② アンケートを取る際には自分の身元を名乗ること
③  協力いただく方に、必ずアンケートの趣旨を伝えること
を確認し、準備が出来たチームから外に出るよう指示した。

すると、どうだろう。誰一人教室に残ることなく、
次々と外へ出ていくではないか。
私たち教員の予想を、良い意味で大きく裏切ってくれたのだ。

駅前に到着すると、生徒たちは様々な場所に分散し、
アンケートを行っていた。
その姿は、決して学校内で見ることができない奇跡の連続だった。

 普段は飄々とした雰囲気で積極的に挨拶をすることも少ない生徒が、
お年寄りに精一杯の笑顔で声を掛け、アンケートを書いてもらっている姿。

職員室で先生に声を掛けることすらもなかなかできない生徒が、
声を掛けるタイミングを掴もうと必死で歩く人の後ろをついていく姿。

何度断られても、再び笑顔を作り直して一生懸命声を掛ける姿。

「将来は人と関わらない仕事がいい」と言っていた生徒が、
最後まで諦めないで、皆と協力しながら声を掛ける姿。

普段は面倒がって、なかなか動こうとしない生徒が
どんな人に声を掛けるとアンケートに答えてもらえるか
独自の法則を見出して、積極的に歩き回る姿。

そんな生徒たちの必死で奮闘する姿を、柱の陰から眺めながら
何度も「頑張れ、頑張れ!」と心の中で叫んだ。

生徒たちのひたむきな姿を見ているうちに、普段何気なく過ごす中で、
知らず知らずのうちに勝手なフィルターを通して見てしまい、
彼女たちの中に眠っている力を見逃しているのではないか、
と考えさせられた。
教師としての姿勢を振り返る、大きな気づきを得た。

「困難こそが人を成長させる。」
生徒たちを成長させるのは、絶対に学校の中だけでとどめてはいけない。
私たち大人が社会をもっと開き、彼らに学びの場を提供すべきなのだ。
そんな機会を与えれば、子どもたちは今よりももっともっと輝くだろう。

「キャリア教育の父」と呼ばれるケネス・ホイトは、
働くという概念を定義する際に
“キャリア教育は教育関係者のみによってなされるものでなく、
社会全体の運動である“という言葉を遺している。
昨日よりも少しだけ頼もしくなった生徒たちの背中を眺めながら、
改めてそのことを強く実感した一日となった。