「全員を全国大会に連れて行きたい」。そう宣言してスタートしたクエストの授業だったが、生徒たちはこの言葉をどのように捉え、今日という日を迎えたのだろうか。
その問いに対して、彼女たちは発表会の中で見事に答えてくれた。どのチームも短い間に更に磨きを掛け、気迫のこもったプレゼンテーションを行なった。校内発表会は最高の形で終えることができた。
その後、冬休みの課題として授業の感想を書いてもらった。それらを読んで改めて、彼女たちがどれほど真剣にこの授業と向き合ってきたのか本当によくわかった。

「私はこの学校に入学してから、初めてプレゼンという言葉を聞いた気がします。前から知っていたかもしれませんが、自分で考えた事がなかったからかもしれません。そんな私も、この授業を終えてプレゼンの大切さが身にしみてわかるようになりました。もし、このプレゼンの授業を受けていなかったら、きっと社会に出たとき苦戦し最悪、職業を放棄してしまっていたかもしれません。」
「今、昔の自分に会えるとしたら、『なぜ、もっと早くから企業の一員としての自覚を持たなかったのか』と殴ってやりたい気持ちです。今も、その自覚が一体何か、ということを完全には理解できていませんが、プレゼンを成功させたいという気持ちはとても大きいです。前までの自分は、企画を考える事だけで精一杯でした。いつまで経ってもアイデアがまとまらず、とても苦しい日々でした。そんな日々も今となっては良い思い出になりつつありますが、こうして乗り越えられたのはチームの支えがあったからです。これから年明けに審査に向けての撮影を行うので、後悔を残さぬよう自分たちの企画への想いをぶつけたいと思います。そして学校を卒業したとき、この授業を生かせる大人になりたいというのが今の夢です。」

「後期に入ってから企画が行き詰ることが多くなりましたが、最近その理由に気が付くことが出来ました。それは『気持ちの入れ方が弱かった』ということです。仲がいい子達だとリラックスしてできる反面、普段と同じようなゆるい気持ちのまま作業に取り組んでしまい、そのやりきれない気持ちが作業を遅らせてしまったのかもしれません。そのことで不安になることもありましたが、それぞれのチームが色々な問題を抱えながら、それでも頑張っているということにも気づくこともでき、他のチームとも励まし合って取り組むことが出来ました。」
「私は『プレゼンの授業は社会そのものだ!』と感じました。このことを今のうちに感じることが出来て本当によかったと思います。一人ひとりが他人とぶつかりながら、同じ目標に向って歩いていくのは大変で難しいことですが、『みんなで意見を出し合うことの楽しさ』を知った今、新しい発見を得ることが出来ました。自分の考えが広がり、人前で話す勇気や自分の弱点や得意なことがわかるようになりました。」

「問題に向き合う人の数だけ見つかる答えと無限の可能性。『答えのない問題』に取り組んでいくことに対し、初めはすごく楽しみでワクワクしていたのに、深く関わっていくにつれて意見がまとまりにくくなり、なかなか一つの案として取り出すことが出来なかったときは逃げ出したいとも思いました。でも、長い間苦しんだ時間が『一瞬のひらめき』によって救われました。たくさんの小さなアイデアが集まり、それらのつながりが出来たとき、一つの大きな意見へと変わっていく。ひらめきは一瞬だったとしても、キラメキとして考えれば『一生のキラメキ』。そう考えたとき、今までやってきたことの中には大切なキーワードがたくさん含まれていて、無駄な時間なんて一分一秒たりとも無かったと思いました。」
「今までは就職難だったり、上下関係の面倒くささだったり、どんなに頑張っても結果が出なかったり…仕事に対して、マイナスなイメージばかり持っていました。でも今回ミッションに取り組んでみて、たとえ結果が出るまでの時間が長かったとしても、頑張った分だけそれなりの結果になって返ってくるということを改めて実感しました。これから先、少しずつでもいい、少なくとも自分が就職活動を始めるときまでには、これまで抱いてきた働くことに対するマイナスな考えを越える、プラスの考えを持てるようになれたら良いなと思います。」

「私がクエストの授業で苦しかったことは、チームメンバーと楽しく、明るく話し合いができなかったことです。私はリーダーであるのに、彼女たちに授業に積極的に参加してもらえるよう、彼女たちの気持ちを動かすことができませんでした。本当は次の授業が待ち遠しく思えるようなチームにしたかったのに、現実は違いました。私にはそんなチームを作る力がありませんでした。そしてリーダーである私が『もう企画なんてできない、もう授業なんか受けたくない』と思うようになっていきました。チームメンバー全員と団結できなかった自分の力のなさが一番苦しくて、辛かったです。私は、この授業に悔いが残っていますが、この経験からリーダーや人の上に立つことの偉大さを学びました。だから、自分がリーダーとしてやり遂げることが出来なかった悔しさを胸に刻み、次こそは自分の力の限りチームを団結させる努力し、自分自身だけでなく周りの人も悔いが残らないように努めたいと思いました。」
「私は、街頭アンケートを通して人の優しさを学びました。人がこんなに優しいとは知りませんでした。授業で街頭アンケートを行わなかったら、私はきっと長い間、人の優しさに気がつくことができなかっただろうと思います。そのことを知ったことで、人と接することが少し嫌ではなくなりました。もっと人の優しさを知りたいと思うようになりました。私はずっと、人と接するのがあまり好きではありませんでした。そのため営業のような、お客様と接する仕事に抵抗がありました。しかし今は違います。営業の仕事をやってもいいかもしれないと思えるようになるくらい自信がついたのです。そして、働くということを以前よりも前向きに捉えられるようになり、自分の将来の選択肢が増えました。」

「自分たちの企業のミッションを与えられた夏、あまりにもわからないことだらけで戸惑い、この現実から逃げたくなりました。何度話し合いをしても一向に進まず、いつしか“一番大好きだった授業”から“一番大嫌いな授業”へと私の気持ちは変化していきました。『リーダーとして、どのようにして指示を出せばいいのだろう』。この言葉が毎週授業の終わるたびに頭をよぎりました。本当に悔しくて辛くて、考えれば考えるほどミッションから遠ざかっていきました。でも、そんなある時、ふと“企画のイメージ図”が降りてきたのです。こんなに嬉しいことはありませんでした。とはいえ、それからも何日も何日も徹夜をする日が続きました。ようやく発表会を迎えることになりましたが、作品を完成させることができず不本意な形で発表することになりました。完成しなかったものの、今やれる限りのことをすべてやりきった、という気持ちが“自信”へと変わり、『何としてでも成功させる』という言葉が頭に浮かびました。ここまで辿り着くには、言葉や文字では表せないぐらい辛く険しい道程でした。『何でこんなに頑張らなければいけないのだろう』と思うことは数えきれないほどありました。でも、長く葛藤し続けた日々があったからこそ、一つの企画を完成させられた喜びは他の授業では決して味わえないものでした。」
全国大会に連れて行くことも目標にしてこれまで頑張ってきたけれど、目に見えるゴールよりも遥かに大事なことを、彼女たちは既に手に入れたことを実感させてくれた。
勝ち負けではなく、大事なのはそれまで歩んだ過程にある。本気で頑張って、やりきって、それでも結果が出なかった時の悔しさ。それを味わう生徒はたくさんいるだろう。でも、悔しさこそが人を育ててくれるのだと、私は思う。たとえどのような結果になったとしても、そのことを彼女たち自身が感じ、誇りを持ってくれたら、と心から願う。






































