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2014年1月10日

30センチの壁

授業は、先日行った校内発表会での様子を

見るところから始めた。

 

「自分たちの企画を見てどうだった?

一年生と比べてどんな風に感じたかな」

 

「やばかった~!一年生の方が全然良い企画だったし」

「私たち、完全に負けてたよね」

「去年の私たちよりもクオリティが高かった。

これって、一年生の方が優秀ってことじゃない!?」

ふざけながら感想を言い合う彼女たちの心中は

決して穏やかなものではないはずだ。

 

「そっか、そんな風に感じたんだね。

じゃあ、みんな。これからどうしようか?

みんなの目標はどこに設定したいのかな」

授業は残すところあと2回に迫っていた。

彼女たちがどのような心構えで残りの授業に

取り組んでいきたいか、改めて確認しておきたかった。

 

「全国大会出場でしょ」

迷わず、そう宣言する生徒。

その言葉に圧倒されて驚いた表情を見せる生徒。

「えー、そんなの無理でしょ」と弱気になる生徒。

「弱気になってどうすんの、やるしかないっしょ!」

と、けしかける生徒。

彼女たちの思いはさまざまだが、

このままでは終わらせたくない

という共通の思いがあることがわかった。

 

A4用紙に大きく“目標 全国大会出場!”と書き、

ホワイトボードに貼り付けた。

「だとしたら、今みんなが乗り越えるべき壁は

校内で一番良い企画を作って、まずは予選を通過すること。

その壁を乗り越えるために、もう一回企画を練り直そう」

彼女たちは大きく頷いた。

 

こうして迎えた今日の授業。

私にとって、ひとつ大きな目的があった。

それは彼女たちの前にある“壁を取っ払う”ことだった。

彼女たちの前には、いつも大きな壁がたちはだかっていた。

それはノートパソコンの画面だ。

彼女たちの話し合いは、いつもノートパソコンの画面を隔てて

行われていた。

ネットで探してきた情報を共有することは容易なのに、

自分のアイディアをみんなの前で話すことには抵抗がある。

たった20センチの高さしかないパソコンディスプレイが

いつも彼女たちの話し合いに壁を作り、

腹の底から議論を交わすことを妨げているように見えた。

 

「今日はパソコンを全員しまってください。

みんなの頭の中にあるものだけで、今日は勝負しよう」

抵抗するかな?と予想していたが、思いのほか素直に

全員がパソコンを片付け始めた。

 

さてどうしようか。

彼女たちの強みと弱みを頭の中で整理する。

弱みは「アイディアを整理して全体を俯瞰すること」、

「アイディアを互いにぶつけ合うのを避けること」だが、

その一方で、「感性の鋭さ」という素晴らしい強みを持っていた。

彼女たちの強みを最大限引き出す方法は何か。

何度も考えて行き着いた方法が、彼女たちの代わりに

私が彼女たちの何気ない発言をメモで残しておくことだった。

 

「みんながこれまで考えてくれたことをメモしたものがあるので、

それを整理しながら、足りない部分をみんなで話し合っていこう」

まずは企画の全体像を俯瞰するところから始めた。

ターゲットは誰なのか。

そのターゲットにどうなってほしいのか。

そのためにどんな商品を提案すればよいのか。

書き留めてきたメモをA4用紙に大きく書き直して、

一つひとつ貼りながら、彼女たちの頭の中を整理した。

 

こうして全体を眺めてみると、企画のボロが段々と見えてくる。

ここから今度は批判家になりきって、企画の矛盾を指摘していく。

「なんのために、○○はあるの?」

「これって、このターゲットの人たちの本当に求めていることなの?」

厳しい指摘に対して、誰がこれに答えるのか見合わせて、

ようやく一人が代表して答える、というやり取りをしばらく繰り返した。

それ以外のメンバーが傍観者のように振る舞うのが気になった。

「自分が答えなくても、きっと誰かが答えてくれるだろう」

そんな気持ちが見て取れた。

 

素晴らしいアイディアを自分には出せるわけがない――

その思い込みが自分のアイディアを他者に見せることを阻み、

傍観者として振る舞う原因を作っているのではないだろうか。

パソコンの壁は外れたが、彼女たちの心の壁は

一向に崩れないことにヤキモキしはじめていた。

 

「あ~、めんどくさい!!」

思わぬところで壁を崩すきっかけが生まれた。

 

「ここは、こういう意味で考えていたんじゃない?」

「いや、そうじゃなくてこうでしょ!」

企画の解釈の些細な違いについて

やり取りが交わされ、その中で思わず出た言葉が

“めんどくさい”だった。

 

「めんどくさいじゃなくて、まずは○○ちゃんの話を聞こうよ」

咄嗟に出たひとことが、彼女たち全員の意識を

“傍観者”から“当事者”へ変えた。

先生から発せられる問いに仕方なく答えるのではなく、

自分たち同士で互いに向き合って話し合おうと、

姿勢にほんの少し変化が見られるようになった。

「ちゃんと話を聞いて!」

「これってこういうことだよね?」

頻繁に声を掛けあって確認する姿は、ぎこちないながらも

全員が話の輪に参加しているように感じられた。

 

彼女たちは、これからもこんな調子で

色々なアイディアをぶつけ合うことができるだろうか?

そして、そこから思いもよらない新しいアイディアを

生み出すという経験ができるだろうか?

その経験ができたとき、自ずと予選通過への道が開けるだろう。

 

残り6時間。

彼女たちは自分自身の中にある壁を壊すことができるだろうか。

 

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