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2012年12月4日

チームの試練(前編)

今日はクエストに取り組んでいる生徒たちが
半年近くかけてつくりあげた企画を発表する大事な日。

その大事な日に待ち構えていたのは“最悪の事態”だった。

「先生、A子が熱を出して欠席みたいです」
不安そうな表情をしたその生徒は、私の姿を見つけると
ほんの数分前、A子の担任が電話口で話していたことを
教えてくれた。

「このタイミングでやったか ―」
A子がどこかでつまずくことは予想していたが、
まさかこのタイミングで発表に穴を開けるとは
想像もしていなかった。

「具合が悪くて休みか・・・ そうか」
反射的に出た言葉は自分の気持ちを落ち着けるためだったが、
動揺した気持ちを生徒に隠すための精一杯の強がりでもあった。

A子は今日の発表で使う資料のすべてを持っていた。
彼女が来なければ発表はできないかもしれない。
残りのメンバーの状況を確認するために、教室へと向かった。

教室に入ると、ほかのチームが発表の最終確認をする中で
B子が教室の片隅に、ひとりポツンと立っていた。
B子から話を聞くと、本当ならばこれから3人で
原稿の最終確認をすることになっていたらしい。
もう一人のメンバーであるC子はまだ来ていなかった。

幸いなことに、修正していた原稿はB子が持っていた。
発表はどうにかできそうだ。
残りは発表用のパワーポイントと、A子が修正した内容の確認。
早速、A子の自宅に電話してみると、母親が電話に出た。
A子と話がしたい旨を伝えたが、結局、彼女から連絡はなかった。

「自分はこんなに頑張ってやっているのに」
そんなことをA子が訴えているように感じた。
A子が休んだのは熱が出たからという理由だけではない。
B子とC子に対する不信感と、チームの中でひとり奮闘する
孤立感が引き金となっているのは明らかだった。

3日前、A子がこんな言葉を漏らしていた。
「『○日までに原稿を送って』と何度メールしても返事が来ない」
「『わからないことがあったら何でも相談して』
とメールしても、一度も反応が返ってきたことがない」

A子は何としても全国大会に出場したい、という気持ちで
一生懸命頑張っていたが、残りふたりのメンバーが
何を考えているか分からず苦戦していた。
彼女がふたりと何とか距離を縮めようと努力する気持ちを
理解する一方で、メールばかりに頼って
コミュニケーションを取ろうとする3人の距離感に
ずっと違和感を覚えていた。

この微妙な距離感は決してA子だけの原因ではなかった。
B子は日頃から自分の気持ちや考えを口に出して伝えるのが
人一倍苦手な生徒だった。
そのため、A子に対しても自分の仕事の進捗状況や
自分がどうしたいのか、まったく伝えられていなかった。

ここ数週間、寝る時間を削って発表の原稿を修正していたことは
B子の母親から電話があって、私も初めて知った。
しかし、A子からしてみれば、何も話してくれないB子は
「期限も守ってくれないし、相談もしてくれない」
何を考えているかわからない存在にしか映っていなかった。

C子の態度もA子に不信感を与えていた。
C子は基本的にはA子から指示を受けたことしかやらず、
複雑なことになると「わからない」といって、
すぐに逃げ出す傾向があった。
ふたりが話し合っているときでも、ひとりだけ絵を描いて
話に参加しないことも度々見受けられた。

3人それぞれが原因を作って
今、最悪の事態を生んでしまっている。
それをいくら嘆いても仕方ない。
彼女たちの発表は1時間後に迫っていた。

手元にあるのはB子が修正してきた原稿のみ。
あとはふたりでどうにかするように指示を出し、
すべてを任せることにした。

A子はこれまでいつもひとりで先回りして考え、
一方的な指示を出すことが多かった。
B子とC子は積極的に動いてくれるA子の行動力に甘え、
自分たちからA子と話し合う場を作ることは一切しなかった。

A子不在の中での発表、という突然舞い込んだ試練は
3人が“協力して一つの作品を作る意義”に、
もう一度向き合うきっかけになるかもしれない。

ふたりは見事に修羅場を乗り越えた ――。
込み上げてくる感動を抑えながら
彼女たちの姿を静かに見守った。

B子はいつもと違う、はっきりとした声で
堂々と自分たちの企画を発表した。
A子が書いた原稿を「ただ読まされている」のとは
明らかに違っていた。

それはこの数週間、A子が書いた元原稿を
何度も何度も読み直し、自分の言葉で表現できるよう
修正してきた積み重ねがあったからだろう。
B子の試行錯誤のプロセスが
彼女に自分の言葉でしっかりと話すための自信を与えた。

C子の発表はかなりおぼつかないものだったが、
当事者としてしっかり参加していることを証明してくれた。
発表後、何人ものクラスメートから
「あの時のCちゃんの受け答えはすごかった」
と褒められるほど、口下手なB子をサポートしていたからだ。

何とか最悪の事態は乗り切ったが、
あらたな問題が私の頭をかすめていた。
A子の「自分だけが…」という気持ちを
どうやって気づかせたらよいだろうか ――。

何の答えもないまま、再びA子の家に電話を掛けた。


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